PR

 建設費の高騰などから、全国で建築工事の入札不調が相次いでいる。国土交通省の調査によると、2013年度の建築・設備関係の国交省直轄工事における、入札公告件数に対する入札不調・不落の比率は約3割に及ぶ。入札が不調に終われば当然、着工は延期される。これが建築設計事務所に思わぬ損失を招いている。ある大手設計事務所の幹部は、「延期された着工までに行う業務の負担がばかにならない。それにもかかわらず報酬の扱いが不明確で、公共建築ではほとんど受け取れていない」と話す。

2013年度の国土交通省直轄工事における工事契約達成率。2014年3月時点では、入札公告件数の約3割で入札不調または不落が発生している。ただし、13年度に入札の対象となった工事は14年9月には再入札などによって、まだ契約に至っていない比率は工事件数ベースで1.9%まで減っている(資料:国土交通省)
2013年度の国土交通省直轄工事における工事契約達成率。2014年3月時点では、入札公告件数の約3割で入札不調または不落が発生している。ただし、13年度に入札の対象となった工事は14年9月には再入札などによって、まだ契約に至っていない比率は工事件数ベースで1.9%まで減っている(資料:国土交通省)

 入札が不調になれば、実施設計が完了していても、担当設計チームをほかのプロジェクトに回すことはできない。発注者の要望で議会説明用の資料作成に協力したり、建設会社が提示したVE案を査定したりと、落札までの調整業務に引きずり回される。この大手設計事務所では現在、追加報酬を求めて、10件ほどのプロジェクトで発注者と交渉中だ。しかし、公共建築では「一度議会を通った事業費は、簡単には増やせない」と、発注者に泣きつかれている――。設計事務所の幹部はこう打ち明ける。

 困ったことに、こうした宙に浮いた状態は落札するまで続き、終わりが見えない。建設費の削減に向けて設計変更するには、議会の承認が必要だ。議会開催まで待たなくてはならないうえに、設計変更が議会に認められるとは限らない。いたずらに時が流れ、「打ち合わせ」と称する報酬の曖昧な業務がだらだらと繰り返される。

 「報酬が入るか分からない仕事に設計者を張り付けざるを得ない状況は経営上、大きな問題になっている。設計事務所の人手が足りないという話をよく耳にするが、入札不調に伴う業務の問題も要因の1つではないか」と、設計事務所の幹部は推察する。今のところ、見えない業務の報酬を回収するための打開策は、見つかっていないという。

 建設費は高止まりしており、今後も官公庁の建築工事の入札が不調に終わる可能性はある。こうした事態に備え、契約書の特記事項の見直しといった対策を考えておく必要があるだろう。

設計報酬回収に関する緊急アンケート調査を実施いたします。是非、ご協力ください。アンケートは[こちら]から。