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<<リノベブーム再考(1)新耐震基準に満足するな

 住宅ストックの性能向上の必要性について、前回の耐震性に続き、今回は省エネ性のデータを示したい。

 省エネ基準は、エネルギーの使用の合理化等に関する法律に基づく。1980年(昭和55年)に旧省エネ基準、1992年(平成4年)に新省エネ基準、1999年(平成11年)に次世代省エネ基準をそれぞれ設け、徐々に強化してきた。住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく住宅性能表示制度では、旧省エネ基準を省エネルギー対策等級2、新省エネ基準を等級3、次世代省エネ基準を等級4としている。

断熱レベルと年間の冷暖房費の比較(資料:国土交通省の資料を基に作成)
断熱レベルと年間の冷暖房費の比較(資料:国土交通省の資料を基に作成)

 住宅の省エネ基準は2013年(平成25年)10月1日に大幅に改正された。これまでの省エネ基準は外皮の熱性能だけを評価していたが、一次エネルギー消費量も新たに対象になった。それに伴い、住宅性能表示制度も今年(2015年)4月をめどに、省エネルギー対策等級が二分化し、断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級になる予定だ。断熱等性能等級は1999年基準と2013年基準がほぼ同じ水準なので、各等級の性能は実質的に変わらない。一方、一次エネルギー消費量等級は2013年基準を等級4、低炭素住宅レベルを等級5とし、それ以外は等級1となる。

 国土交通省のデータによると、住宅ストックのうち、現行の省エネ基準(1999年基準)を満たす住宅は、わずか5%にすぎない。現行の耐震基準(新・新耐震基準)を満たす住宅が少なくとも27.3%だったのに比べて、適合割合はもっと低い。1980年、1992年、1999年、2013年と、省エネ基準は強化を図ってきたが、各時代で適合を義務付けてこなかったツケが回っている。

日本の住宅の省エネ基準への適合状況。次世代省エネ基準(1999年基準)は5%ほどしかなく、無断熱が4割ほどを占める(資料:国土交通省の資料を基に作成)
日本の住宅の省エネ基準への適合状況。次世代省エネ基準(1999年基準)は5%ほどしかなく、無断熱が4割ほどを占める(資料:国土交通省の資料を基に作成)

2000年以降から選べばいいのだが…

 耐震性や省エネ性で、現行基準と同等レベルの住宅性能を求めようとすると、おおむね2000年以降に建設された住宅から選ぶのが効率的と言える。ただ、これまで見てきたように、そのような住宅は中古住宅流通市場に多くは存在しない。10軒のうち7軒が耐震性に劣り、9軒が省エネ性に劣るという場面に遭遇することは想像に難くないだろう。市場に出まわるのは築後年数の経過した住宅が多いだけに、実際は「当たり」はもっと少ないかもしれない。

 そこで注目したいのが性能向上リフォームだ。低い性能の中古住宅にそのまま住むのではなく、耐震性や省エネ性などをアップして安全・安心に暮らす。分譲マンションは区分所有者が性能向上できる範囲は限られるが、戸建て住宅ならいろいろ手を加えやすい。

 耐震は地震国ニッポンに住むからには避けられない。断熱や省エネは冷暖房費を削減し、健康に生活するためには不可欠だ。耐震改修と断熱改修は外皮(窓、壁、床、屋根など)をいじることが多いので、工事の相性もいい。

 国土交通省は2013年度から、長期優良住宅化リフォーム推進事業をスタートした。性能向上を施す住宅に対し、新築の長期優良住宅と同程度の水準(S基準)まで性能向上すれば1戸当たり上限200万円、S基準には満たないが一定の性能向上が見込まれる水準(A基準)には同100万円をそれぞれ補助する。技術力が向上し、顧客満足も得られることを考えると、これを利用しない手はないのではないか。

長期優良住宅化リフォーム推進事業の対象工事のイメージ(資料:国土交通省)
長期優良住宅化リフォーム推進事業の対象工事のイメージ(資料:国土交通省)


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※このコラム記事は、ケンプラッツのFacebookページのコンテンツを加筆し、再構成しました。

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