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<<リノベブーム再考(2)中古に「当たり」は少ない

 昨今のリノベーション(リノベ)はどちらかというと、安い中古住宅を買ってかっこいい空間につくり変える手法がもてはやされているように感じる。ただ、安い住宅には安いなりの理由がある。リノベーションブームに水を差すつもりはないが、安い理由が住宅性能の低さにあるのならば、プロはそのまま放置すべきではないと思う。

 国は2020年までに、すべての新築住宅に省エネ基準への適合を義務付ける方針を明らかにしている。これまでは床面積300m2未満や、年間150戸以上の建売戸建て住宅を新築・販売する事業者以外は、省エネ基準の適合は努力目標でしかなかった。これに「義務化」という厳しいハードルを設ける。

 省エネ基準適合が「標準」になる2020年以降は、基準不適合の住宅が住宅市場で不利になることは間違いない。冷暖房費や医療費など家計の面においても、住宅の省エネ性の優劣がもたらす差異は目に見えて明らかになるだろう(関連記事:「リノベブーム再考(2)中古に「当たり」は少ない」)。

 耐震性もしかり。1981年以降の新耐震基準であっても、2000年の法改正以前に建設された木造住宅の多くは、現行の耐震基準を満たしていない。今後、この時期の木造住宅は、コンディションしだいでは旧耐震基準の住宅と同様に市場価値が低下する可能性がある(関連記事:「リノベブーム再考(1)新耐震基準に満足するな」)。

 あと5年もすれば、「性能の低い住宅=市場価値の低い住宅」が不動産取引の常識になる時代がやって来る。手塩にかけて顧客に引き渡した住宅が、市場で価値を認められず、冷暖房費が掛かり、住まい手の健康を損ない、巨大地震で甚大な被害を受ける――。こんなことは、プロの誰も望んでいないはずだ。

築年ピラミッド(全国版)。「2030年までの住宅ストックの推移予測」(ベターリビング)を基に、構造、建て方別の住宅数を2010年、20年、30年の各時点について築年別に集計した(資料:日経ホームビルダー特別編集版「住宅ストック市場年鑑2015」)
築年ピラミッド(全国版)。「2030年までの住宅ストックの推移予測」(ベターリビング)を基に、構造、建て方別の住宅数を2010年、20年、30年の各時点について築年別に集計した(資料:日経ホームビルダー特別編集版「住宅ストック市場年鑑2015」)

「とにかくリノベーション」でいいの?

 以前は建物のコンディションの良しあしに関係なく、「とにかく建て替え」というケースが多く目に付いた。ところが今は、「とにかくリノベーション」という風潮があるようで気掛かりだ。住宅を検査(インスペクション)して性能を把握し、コンディションが悪ければ改善の方策を示す――。すべてのリノベーションにおいて、この基本が徹底されているだろうか。

 分譲マンションの場合、たとえ思う存分に専有部分をリノベーションできたとしても、共用部分の性能が低く、将来的な性能向上の改修も見込めないようだと、入居後の生活に不安が残る。転売も困難になるかもしれない。専有部分だけでなく、共用部分のコンディションも見極める必要がある。

 一方、戸建て住宅は、構造や外皮(窓、壁、床、屋根など)に自由に手を加えやすい。性能向上のレベルにもよるが、そのコストが新築を上回るなら、建て替えも選択肢の一つとして検討できる。

 もちろん、どの程度までリノベーションするか、あるいは建て替えるかは、顧客が最終的な判断を下す。しかし、その判断材料となる、知っていること、分かったことをきちんと伝えずに自分に都合よく仕事をするのはプロではない。コンディションを把握しない(把握できない)、改善の方策を示さない(示せない)は、「やり逃げ」に等しく、プロとして信義にもとる行為だ。

 当然ながら、真摯にストック活用に取り組んでいるプロはたくさんいる。性能向上を実践しているプロも少なくない。だが、やり逃げの横行が目立つようになれば、消費者はそっぽを向いてしまい、住宅ストック市場の活性化は到底望めなくなる。

 これまで長らくストック活用は、新築偏重という「国策」の陰に隠れて存在感が示せなかった。それがようやく日の目を見ている。この好機を逃してはならない。

 地震のない国・地域などとは違って、日本の住宅は、脆弱なスケルトン(構造躯体)のままでは安心してインフィル(内装・設備)を楽しむことができない。省エネ性能も世界に遅れを取っている。将来に負の遺産を残さないためにも、リノベーションの次のステージは性能向上を前提としたい。


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※このコラム記事は、ケンプラッツのFacebookページのコンテンツを加筆し、再構成しました。