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<<リノベブーム再考(3)やり逃げしていませんか?

 これまで3回にわたって、リノベーション(リノベ)には性能向上が欠かせないことをデータとともに見てきた。この短期連載コラムは、性能向上を前提としたリノベーションを誠実に実践するプロの方々にとっては不快かもしれない。読者から辛辣なコメントもいただいた。不快に思う方はきちんとしたプロなので、このコラムを読み飛ばしてもらっても構わないと思っている。

 伝えたい本当の相手は、顧客からリノベーションを依頼されても住宅のコンディションを把握せず、改善の方策も示さないプロだ。取材を通じて、きちんとした仕事をするプロがたくさんいることはもちろん心得ている。しかし、業界の全体を底上げしないと、リノベーションの次のステージは見えてこないと思う。それは、本格的なストック活用時代に突入する日本にとって、取り返しのつかない損失になるはずだ。

本格的なストック活用時代に突入する日本にとって、性能向上リフォームに対する業界全体の意識を底上げする時期に来ている(写真:ケンプラッツ)
本格的なストック活用時代に突入する日本にとって、性能向上リフォームに対する業界全体の意識を底上げする時期に来ている(写真:ケンプラッツ)

 はたしていま、性能の低い住宅に「市場価値が低い」というレッテルがどれだけ貼られているだろうか。建築や不動産のプロが適切な手当てもせず、性能の低い住宅をそのまま市場に流通させている実態が一切ないと言えるだろうか――。

 手掛ける住宅について、「性能を向上させる」あるいは「市場から撤退させる」という取り組みをプロが率先してやらないと、健全な市場はいつまでたっても形成されない。これは業界だけでできるものではなく、行政のバックアップや消費者のリテラシーアップも必要だ。なお、特殊な価値がある“ビンテージ住宅”などは、マスの市場原理に無理やり当てはめず、別途、性能向上を図ることが求められる。

 消費者にとって、住宅の選択肢が増えることは好ましい。中古でも新築でも、分譲でも注文でも、賃貸でも持ち家でも、所有や取引の形態によらず、多岐にわたったほうがいい。ただし、いずれの住宅も基本性能がクリアしていることを前提とすべきだ。そのうえで、立地、床面積、仕様、より高い住宅性能などによって、価格差を設けたい。

ワンストップサービスもブームに

 リノベーションブームに関し、もう一つ気になることがある。

 最近、中古住宅探しとリノベーションを同時に提供する「ワンストップサービス」を手掛ける事業者が増えている。住宅の性能を把握しやすいマンションから火が付いたワンストップサービスだが、いまや木造戸建てにも広がってきた。大手も参入し、事業者は増える一方だ。国も補助金や住宅ローンなどの優遇政策を用意して強力にプッシュしている。

ワンストップサービスを考える顧客にとってのメリット(資料:日経ホームビルダー、日経ビジネス「マンション・戸建て 中古の正しい選び方」)
ワンストップサービスを考える顧客にとってのメリット(資料:日経ホームビルダー、日経ビジネス「マンション・戸建て 中古の正しい選び方」)

 ワンストップサービスを考える顧客の総予算は限られる。その枠内でリノベーションの割合を大きくすると、安い価格で購入できる物件を探さなくてはならなくなる。そうすると、事業者から提案されるのは、「住宅性能が低い=市場価値が低い(転売しにくい)」物件になる可能性がある。

 ワンストップサービスにおいて、不動産売買の仲介手数料とリフォームによる利益を天秤に掛ける事業者は少なからずいると思う。「この住宅は本当に買いか?」という顧客の問いに、こうした事業者は的確な情報を開示して応えられているだろうか。

ワンストップサービスを手掛ける事業者が提供するサービスのフロー(資料:日経ホームビルダー、日経ビジネス「マンション・戸建て 中古の正しい選び方」)
ワンストップサービスを手掛ける事業者が提供するサービスのフロー(資料:日経ホームビルダー、日経ビジネス「マンション・戸建て 中古の正しい選び方」)

 リノベーションでは、「新築よりも安い」という売り文句を目にすることが多い。価格を抑えることを優先するため、住宅の基本性能となる耐震や断熱、省エネ、劣化対策、維持管理などを向上させるリフォームを、コストや手間が掛かるからといって提案から退ける事業者もいるかもしれない。

 ワンストップサービスが普及すれば、新築に偏りがちな住宅の選択肢を増やすことができる。中古住宅にまつわる面倒や不安も払拭されるので、住宅ストック市場も活性化する。それだけに、リノベーションの認知度が高まってきた今を大切にしたい。プロの良識が問われている。


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※このコラム記事は、ケンプラッツのFacebookページのコンテンツを加筆し、再構成しました。