PR

手間やコスト、リスクをどうするか

真部 ただ、新しい素材は、今回のテーマである緑化にしてもリサイクルにしてもそうですが、手間が掛かるとか、コストが高くなるということも起こるわけですよね。そのあたりをクライアントとどう価値観を共有するのか、世の中に分かってもらうのか。そのあたりはどうされていますか。

 実は金額差はそんなに大きいわけじゃないんです。木を使う場合だって、名木にするとか、数寄屋の大工の技を使うとかでなければ、石を張った美術館に比べて特別に値段が高くなるわけじゃない。屋根の緑化も、それによって空調のコストが減るとか、そうした大きなメリットを考えると、極端に経済性が悪くなるわけではないんです。

 こうしたことは、やっぱりクライアントとフランクに語り合うことが大事です。値段がこれくらいになるとか、メンテナンスはこのぐらいは必要だとか。例えば緑化の場合、植物は生き物ですから、ある程度のメンテはしてもらわなければいけないわけです。でも、長期的なメリットを手に入れられることを説明すると、分かる人は分かってくれます。

真部 それと、新しい素材にチャレンジするときというのは、当然トラブルなどのリスクにも配慮が必要だと思うんですが。

 そこは一番大変だけど、逆に言えば面白いところでもあって。僕らがいつも心掛けているのは、「最後に仕様書を書くんじゃないよ」ということなんです。要するに、この建物は土でつくってやろうとか、あるいは壁であれば、全部緑化してしまおうとか、一番最初に考えるんですよ。

 それと同時に平面図も考える。だから、「何を使うか」と「どう面積を割り当てるか」ということをダブルトラックで進めていく。そうすれば、「壁面緑化するならこういう問題が生じる」ということを、全部つぶしながら設計できるわけです。

 普通の建物だったら、設計は基本と実施で6カ月ぐらいかかるわけです。その一番最初の時から6カ月間掛けて問題を解決しようとすれば、何とか大体のことは分かってくるんです。

真部 そうやって、緑化やリサイクルの新しい提案を取り入れたプロジェクトも進めていけるわけですね。

 なぜか不思議と、ここのところ緑やリサイクル材をよく使うようになっていますね。 

 2012年12月にオープンするフランスのブザンソン芸術文化センターでは、屋上を「第5のファサード」として扱っています。

ブザンソン芸術文化センター(フランス、2012年12月竣工予定)。屋上を「第5のファサード」と位置付け、緑化、太陽光パネル、トップライト、アルミ板の4種類をモザイク状に配置している。近くの観光地である古い城砦の上から見た景観を重視したデザインだ(資料:隈研吾建築都市設計事務所)
ブザンソン芸術文化センター(フランス、2012年12月竣工予定)。屋上を「第5のファサード」と位置付け、緑化、太陽光パネル、トップライト、アルミ板の4種類をモザイク状に配置している。近くの観光地である古い城砦の上から見た景観を重視したデザインだ(資料:隈研吾建築都市設計事務所)

 ブザンソンの街で一番観光客が訪れる昔の城砦があるんですが、その砦からこの文化センターが真下に見えるんですよ。ひょっとしたら東西南北より、その屋根がファサードとして一番重要じゃないかと思ったんですね。

 そこで、屋根には緑化、太陽光パネル、トップライト、アルミ板の4種類をモザイク状に配置していった。上から見ると色合いがそんなに変わらなくて、屋根全体が緑のグラデーションのように見えるデザインです。