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欧州を代表する大都市であり、世界有数の観光地でもあるパリが現在、様々な交通手段を駆使するモビリティ改革で注目を集めている。クルマ優先社会からの脱却を目指し、シェアリング(共有)の考え方も合わせて公共交通の整備を推進している。

 モビリティ改革のきっかけになったのは環境対策で、大気汚染防止はもちろん、駐車場の削減による土地の有効利用なども含む。さらに高齢化社会に対応し、自動車を運転できない人でも快適な移動ができるまちづくりも目的の一つとしている。

 旗振り役となっているのは、2001年に就任したベルトラン・ドラノエ市長である。ドラノエ氏は環境派市長として知られており、ペットボトル消費量を減らすために水道水の浄化を促進するなど、様々な施策を実行している。毎年夏、セーヌ川沿いの道路を封鎖して開設するビーチ「パリ・プラージュ」が知られるが、これにはパリの都市環境がクリーンになったことをアピールする狙いがある。

 そうした方針のもと、モビリティ改革も精力的に進めている。市長に就任したその年にすぐにバス専用レーン「モビリアン」の整備を開始し、5年後には1936年に全廃されたトラム(路面電車)を70年ぶりによみがえらせた。翌2007年にはサイクルシェアリングの「ヴェリブ」、続いて08年にはこれも約70年ぶりの復活になる通勤・通学用水上バス「ヴォゲオ」を導入している。

ドラノエ・パリ市長が、市長就任の2001年に整備を開始したバス専用レーン「モビリアン」(写真:森口 将之)
ドラノエ・パリ市長が、市長就任の2001年に整備を開始したバス専用レーン「モビリアン」(写真:森口 将之)
パリ市が2007年に導入して急速に普及拡大中のサイクルシェアリング「ヴェリブ」(写真:森口 将之)
パリ市が2007年に導入して急速に普及拡大中のサイクルシェアリング「ヴェリブ」(写真:森口 将之)

 もちろん、そうした多彩なモビリティを闇雲に入れていったわけではない。個々の交通手段の特性を生かしてプランニングしている。例えばトラムは、都心部への敷設は困難であるため、市の外周部を走らせている。これにより、パリをまたいで他の地域に向かう移動者を外周部で受け止めて横に移動させる「ベルトウェイ」の役割を担う。また、ヴェリブは、地下鉄やバスでは賄いきれない場所への移動を補間している。

70年ぶりに復活したパリ市のトラム(路面電車)(写真:森口 将之)
70年ぶりに復活したパリ市のトラム(路面電車)(写真:森口 将之)

 一連の改革のなかで、日本でもよく知られているのがヴェリブだろう。名称はフランス語の自転車(velo)と自由(liberte)を組み合わせたもので、当初から750カ所のステーションと1万1000台の自転車という大規模な導入で始めていること、24時間年中無休であること、使いやすいシステムになっていることなどから、高い評価を獲得した。導入5年目の現在、1700カ所、2万3000万台まで増強。年間22万人、3000万回もの利用がある。市内のモビリティの一つとして完全に定着したと言える。