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新しい「まちづくり」に重要なイノベーターの「確信」

 そのような「まちづくり」は市町村の役割が、非常に大きいといえます。考えてみれば、個人、家族、地域というまとまりがあり、そして行政がいます。ここでいう行政は市町村となります。そう考えれば、住民の健康対策を行うのは、市町村行政の基本中の基本といえるのではないでしょうか。

久野 市町村における健康関連の政策というのは、これまで様々な重要政策のひとつでしかなかった。しかし、今後はもう政策の中心に据える必要があるでしょう。住民の健康問題は市町村の経済に大きく影響してくるからです。社会保障や国民保険は、現在でも自治体の財政を考えるうえで大きな課題となっています。また、極端な話をすれば、「所得も健康度に関係する」というデータがあります。

 もうひとつ重要なのは、辻先生が以前から実践されている「人材育成」です。今回の話は、要するに「イノベーション(革新)」を起こすということです。そのためのイノベーターを、自治体のなかでどうやって育成していくのか。そこの具体化も必要となります。

 イノベーターにまず必要なのは「歩くこと」への「確信」でしょう。健康問題は、これまで栄養や食事の面から解明されてきましたが、近年は歩くことの大切さが日増しに重要視されています。人間も動物である以上、「動く=歩く」ことは基本の営みです。この営みが止まったら、弱ってしまうのは必然でしょう。歩くことが健康のすべての基本であるということを、イノベーターがまず「確信」する必要があるのです。

 次に必要となるのは「成功事例を学ぶ」ことです。「どういった環境で人は歩いたのか」「どういった環境で歩こうとしたのか」あるいは「歩かされたのか」を学ぶ必要があります。逆に言えば、これは成功例を実践したイノベーターを探すことでもあるでしょう。

久野 今一緒に活動している市長は、「この政策を柱に据えないと、自分の『まち』は間違いなくダメになる」という確信を持っています。その成功事例としてご紹介できる、驚きの体験があります。新潟県三条市の話です。ここは中心市街地が2年前からいわゆる「シャッター街」になっており、街の中心部の高齢化率が38%という状態で、このままでは「限界集落」に到達してしまうと危ぶまれていました。そこで、地域再活性化の一環として月1回のマルシェ(市場)を開催するようにしたのです。「かなり盛況になっている」と聞いていたので先日、現地へ行って見てきました。すると、人口約10万人の街に、推定で9万5000人が来場していたのです。これまで、私は講演で「人が歩かない街」の代表として三条市を出していましたが、今回はそこが人で埋まっていました。

 今の三条市の話は、「イベント性のある『まち』を、どうやったら作れるのか」という議論を、市役所のあらゆる職員が確信を持って行ったのだろうと思います。加えて、それに共感する市民が出てくる必要もあるでしょう。

2012年10月14日に、新潟県三条市で開催された「~三条マルシェ~ごった市」。歩行者天国となった商店街には、150以上の出店が並んだ
2012年10月14日に、新潟県三条市で開催された「~三条マルシェ~ごった市」。歩行者天国となった商店街には、150以上の出店が並んだ
三条マルシェの会場となった商店街。かつては人通りも少なく、「人が歩かない街の典型例」(久野教授)だった(資料:久野譜也)
三条マルシェの会場となった商店街。かつては人通りも少なく、「人が歩かない街の典型例」(久野教授)だった(資料:久野譜也)