PR

 鹿島は1月16日、従来は技術者が目視で観察していた山岳トンネルの切り羽の風化変質を、タブレットPC内蔵のカメラで撮影して画像解析することで判定できる手法を開発したと発表した。技術者の経験に頼らず、客観的に評価できる。危険な切り羽に接近して試料を採取しなくて済むので、安全性も高まる。同社が宮崎県延岡市で施工中の南久保山トンネル工事に採用し、実用できることを確認した。

 以下は発表資料。


タブレットPCを用いた山岳トンネル切羽の「風化変質判定システム」の開発

タブレット内蔵のカメラで切羽を撮影、解析して風化変質程度を数値化

 鹿島(社長:中村満義)は、山岳トンネルの切羽観察の中で重要な項目である「風化変質」について、技術者の目視で行われていた評価を、タブレットPC内蔵のカメラで撮影し画像を解析することで評価するシステムを開発しました。これまで技術者の経験や技能に頼っていた風化変質の評価を数値化して客観的に行うことができるため、技術者による個人差を無くし、より適切な切羽観察が行えます。今回開発したシステムを南久保山トンネル(宮崎県延岡市)の低土被り部の風化変質評価に適用し、定量的な評価を行うことができました。今後鹿島では、風化変質が問題となる山岳トンネル現場に本システムを適用していく方針です。

本システム概念図
本システム概念図

開発の背景

 山岳トンネルの工事では、安全及び品質管理上、適切な支保パターンを選定することが求められます。支保の選定には、既施工区間の変位計測及び支保の観察の他、適切な切羽の観察が重要です。一般的に切羽観察では、「風化変質程度」、「割れ目の間隔・状態・向き」、「湧水量」などの項目を目視で確認しますが、特に数値化しにくい「風化変質」は判定の差が個人によって影響されやすい傾向にあります。そこで、従来から「地山判定委員会」等を設けて、客観化の努力がされています。

 切羽における岩盤の風化変質が進行すると、崩落の危険が高まります。これまで定量的に風化度合を測定する方法はありましたが、切羽に接近して試料を採取して分析しなければならず危険であること、切羽全体の測定が困難であること、また、分析に時間がかかり現場で判定することができないなどの課題がありました。

 山岳トンネルにおける岩盤の風化は、岩石に含まれている鉱物と、岩盤内の浸透水が反応し、粘土鉱物を生成することによって進行します。粘土鉱物は、茶・黄・白色など、風化前の鉱物と異なる特徴的な色調を示すことがわかっています。そのため、岩盤の色調変化を数値的に測定し、その変化範囲を定量化することにより、岩盤全体の風化変質程度を評価することとしました。現場で短時間に風化変質程度を評価するために、タブレットPC内蔵のカメラで切羽を撮影しその画像を解析するシステムを開発しました。

本システムの概要

 本システムは、タブレットPCに内蔵のカメラを用いて切羽を撮影し、画素毎の色調を数値に変換し、その結果をコンター図で示すものです。色調の比較には、L*a*b*値(注)が適していると言われていますが、デジタルカメラは光の三原色(RGB値)として結果を表示するため、本システムでは、RGB値をL*a*b*値に変換するプログラムを開発し、タブレットPCに搭載しています。デジタルカメラのRGB値は、周辺環境に影響されやすいとされていますが、カラーバーを一緒に撮影しそれをもとに色調補正を行っています。これにより、トンネル内の照明やフラッシュの違い、撮影者の技量の差があってもカラーバーにより補正されるため、同一条件での色調解析が可能となります。解析結果は、変換されたL*a*b*値をもとに色調解析を行い、風化変質程度をコンター図化するとともに、風化部分の面積比を数値化して出力します。

 本システムにより切羽に近づくことなく、切羽全体の色調を一度に測定できるため、切羽の風化変質の程度を数分で評価することが可能となりました。また、判定結果の主観性がなくなり、定量的な切羽評価が行えます。さらに、タブレットPC内蔵のカメラを使用することにより、デジタルカメラからPCへ画像を転送することなく、画面を数回タップするだけの簡単な操作で、現地にて評価が行えることも大きな特長です。

 尚、本システムの開発にあたっては、京都大学防災研究所の千木良雅弘教授の指導を受けました。

切羽の風化部分抽出状況
切羽の風化部分抽出状況
(注)L*a*b*値・・・物体の色を表すのに最も多く使用される表色系。明度をL*値で表し、色度をa*値、b*値で表す。a*値が+方向だと赤、-方向だと緑を表し、b*値が+方向だと黄、-方向だと青を表す。

現場での適用

 本システムを南久保山トンネル新設工事(宮崎県延岡市)の低土被り部の切羽観察に適用しました。南久保山トンネルでは、土被りが最小で1m程度になるため、地表部からトンネル天端に広がる風化変質の程度を定量的に評価することが、切羽評価並びに支保選定に非常に重要と考えられました。

 これまでの切羽観察では、観察者の目視によって4段階の風化程度に評価していましたが、本システムにより、未風化(0)~強風化(IV)までコンター表示することができます。低土被り部では、地質専門家による目視観察でも、本システムと同様に風化部の出現を確認しており、本システムが専門家の目視と同程度の評価が行えることを確認しています。さらに、従来方式の定量的評価との比較も行い、高い相関を保ちつつ迅速かつ安定した結果を出力できることがわかり、本システムの実現場への適用性を確認しました。

南久保山トンネルでの撮影風景と画面表示例
南久保山トンネルでの撮影風景と画面表示例

今後の展開

 今回開発したシステムにより、南久保山トンネルの低土被り部の風化変質程度の定量的な評価を、タブレット端末の非常に簡単な操作だけで行うことができました。鹿島では、今後、山岳トンネル工事に本システムを積極的に適用し、更なる工事の安全性及び品質向上を実現していく方針です。

 また、トンネル工事だけでなく、例えば、ダム堤体基礎岩盤の検査や、ダム原石山の分類に活用するなど、本システムの他分野への応用も検討していく方針です。

工事概要

工事名  : 宮崎218号 南久保山トンネル新設工事
企業者  : 国土交通省九州地方整備局延岡河川国道事務所
工期   : 2013年2月~2014年5月
工事場所 : 宮崎県延岡市北方町南久保山山地先
概要   : トンネル延長381m、掘削工法NATM

・鹿島のプレスリリースはこちら