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2.日本が迎える少子高齢化、人口減少社会を踏まえて、
  まず都心部において、どのような拠点整備が必要か。

永島恵子氏/東京都。都ではこれまで、建築課長、住宅局企画担当課長などを務めた後、現在の都市整備局都市づくり政策部長に就く(写真:都築雅人)
永島恵子氏/東京都。都ではこれまで、建築課長、住宅局企画担当課長などを務めた後、現在の都市整備局都市づくり政策部長に就く(写真:都築雅人)

永島(東京都) 東京都では7年後の2020年が人口のピークで、その後2060年には2010年と比較して2割減少すると予想されています。経済の拡大は厳しくなり、地球環境の問題も深刻化します。一方で、成熟社会では人々の価値観が多様化し、さらなる生活の質の向上を求めていきます。

 都市経営のコストを縮小しなければいけないにも関わらず、課題が山積しているわけです。集約型の都市構造に変えることが大切で、地域の特性を踏まえつつ、拠点を選んで市街地を再構築していく必要があります。

渡邊功氏/東京急行電鉄。鉄道会社として沿線の街づくり、不動産開発などを手掛け、都心部では渋谷駅周辺の大規模再開発に注力している(写真:都築雅人)
渡邊功氏/東京急行電鉄。鉄道会社として沿線の街づくり、不動産開発などを手掛け、都心部では渋谷駅周辺の大規模再開発に注力している(写真:都築雅人)

渡邊(東京急行電鉄) 渋谷の拠点整備について触れますと、2012年に大型複合ビル「渋谷ヒカリエ」が竣工しました。13年には東京メトロ副都心線と東急東横線の直通運行に伴い、地上部と地下5階のレールがつながりました。

 同時に、街全体を変革する長期プロジェクトも進めています。五輪を1つの契機に、世界に誇る渋谷へと街の価値をいかに高めていくか。例えば、ユニークな谷の地形を生かし、地下5階の副都心線から地上3階の銀座線まで立体的な歩行者ネットワークを構築します。Wi-Fiなどインターネット環境の面で東京はまだ遅れているので、情報系インフラも含めた整備が課題です。

大松 敦氏/日建設計。日本を代表する最大手の建築設計事務所で、同氏は主に都市開発を担当するチームのリーダーを務めている(写真:都築雅人)
大松 敦氏/日建設計。日本を代表する最大手の建築設計事務所で、同氏は主に都市開発を担当するチームのリーダーを務めている(写真:都築雅人)

大松(日建設計) 私たちは最近、駅周辺の再開発を多く手掛けています。公共交通を用いて生活できる東京の街づくりは世界でも注目されています。

 駅周りに集約する都市開発の利点の1つは、環境、エネルギー面で圧倒的に有利なことです。東京で澄んだ青空を見ることができるのは、様々な環境施策の成果ですし、公共交通の利用のしやすさも大きな特徴です。住民の高齢化に伴い、駅周りの重要性を見直す動きがあります。自家用車に頼ることができない高齢者でも、活動しやすい街とすることが大切です。拠点整備や駅周りの開発は、これからの社会に大きく寄与できると思います。

──拠点整備に併せ、郊外の活性化も考えていくべきではないでしょうか。

渡邊(東京急行電鉄) 私たちは、東急田園都市線沿線の街を対象に、産官学民で次世代郊外まちづくりに取り組んでいます。街づくりを始めて今年60周年になる東急多摩田園都市は、かつて人気ドラマの舞台になったように時代をリードするライフスタイルの街でした。定住指向が強いこともあって今では着実に高齢化が進んでいます。

 そうした街に改めて光を当て、持続的な生活圏を再構築していく。高齢者がそれぞれのライフスタイルを保ちながら明るく過ごせるようにしつつ、若年層に住んでもらうための子育て環境も整備する。環境対策も含め、モデル事例にしたいと考えています。

杉本洋文氏/建築家。まちづくりのほか、木造建築の設計を中心に活動し、国土交通省における木造関連の基準づくりなどに関わってきた(写真:都築雅人)
杉本洋文氏/建築家。まちづくりのほか、木造建築の設計を中心に活動し、国土交通省における木造関連の基準づくりなどに関わってきた(写真:都築雅人)

杉本(建築家) 私は現在、高齢化を踏まえた千葉県柏市の団地再生と、神奈川県茅ヶ崎市のまちづくり提言に参画しています。

 従来の団地は高度成長期の家族4人用を基本とした住戸が連なるのみで、お互いに支え合う仕組みの建物や街になっていません。高齢社会で大切なのは、働くことも含めて、それぞれ人生の目標を持って生きていけることです。例えば、団地にある商店街のなかに、そこに来る目的のある拠点をつくり、多世代が交流できるようにする。そんな仕組みを考えているところです。

花岡(国土交通省)  高齢化は2040年代くらいまでがピークとなる期間限定の問題ですが、東京では1970年代以降ずっと合計特殊出生率が低い状態が続いてきました。東京では少子化対策が、より重要なテーマとなります。

 ただ、都心3区の出生率は近年回復しています。一般に、日本全体では女性が働いている地域ほど子どもが生まれている。女性が働くから子どもの数が減るのではなく、働きやすい環境と子育てしやすい環境が両方あれば、出生率は上がる可能性があるんです。例えば、通勤時間を短くできることも一つかもしれません。そうした視点を地域ごとに持つ必要があります。