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4.首都圏を見舞う震災リスクなども踏まえたうえで、
  エネルギー・環境の問題や安全・安心をどう考えるか。

佐脇紀代志氏/経済産業省。同氏は、ICTを利用する都市づくりの一環で「スマートコミュニティー」と呼ぶ分野の政策に数年来、携わっている(写真:都築雅人)
佐脇紀代志氏/経済産業省。同氏は、ICTを利用する都市づくりの一環で「スマートコミュニティー」と呼ぶ分野の政策に数年来、携わっている(写真:都築雅人)

佐脇(経済産業省) 東京のような大都市には、エネルギーを使いながら日本や世界の様々な機能を担っていく使命があります。大震災を経験し、日常生活から事業者の危機管理まで、大きな蓄積ができてきました。今後も世界に貢献できるよう、東京のエネルギーや環境をマネジメントする仕組みづくりを真剣に考えなければいけません。

有本 一氏/シュナイダーエレクトリック。同社はフランスで百数十年、電気業界をリードし、エネルギーマネジメントの提案を国際的に展開する(写真:都築雅人)
有本 一氏/シュナイダーエレクトリック。同社はフランスで百数十年、電気業界をリードし、エネルギーマネジメントの提案を国際的に展開する(写真:都築雅人)

有本(シュナイダーエレクトリック) 2050年には、全世界のうちの70%の人が都市に住むようになるといわれています。都市におけるエネルギー消費量は莫大ですから、知恵や技術を活用し、増大するエネルギー消費量をうまく最適化することが重要になります。そこで注目されているのが、先ほども出たM2MやIoT、センサー技術を用いた最適化です。

川久保雄司氏/エス・エム・エイ・ジャパン。ドイツ本社は、高効率の太陽光発電用パワーコンディショナを開発・販売する世界最大手(写真:都築雅人)
川久保雄司氏/エス・エム・エイ・ジャパン。ドイツ本社は、高効率の太陽光発電用パワーコンディショナを開発・販売する世界最大手(写真:都築雅人)

川久保(エス・エム・エイ・ジャパン) エネルギーマネジメントの面では、全体最適化というのは非常に困難の伴う課題です。太陽光発電についても、風力発電についても、再生可能エネルギー先進国のドイツにおける取り組みから学ぶことが多いと思います。

 東京でも、いきなりエネルギーの全体最適化を目指すのは難しいはずです。しっかり将来を見据えて部分最適化を積み重ねながら、全体最適化につなげなければなりません。具体的には、特定の地域を対象に、独立した発電で賄うオフグリッド化から進めることです。災害に対する冗長性の確保や、環境負荷の低減に結び付くはずです。

横山健児氏/NTTファシリティーズ。環境、エネルギー、ICTなどを観点に、建築物や電力設備の企画、設計、保守、維持管理を担ってきた(写真:都築雅人)
横山健児氏/NTTファシリティーズ。環境、エネルギー、ICTなどを観点に、建築物や電力設備の企画、設計、保守、維持管理を担ってきた(写真:都築雅人)

横山(NTTファシリティーズ) 東日本大震災後に感じているのは、エネルギー供給が従来のサービスを超えて社会インフラ化していく必要性です。

 建物ごとの設計の段階で都市の省エネルギー化を図る一方で、不安定な再生可能エネルギーについては、需要家の使い勝手と連動した動的なエネルギーマネジメントを行うわけです。そのためには、エネルギー消費を抑えながら快適性を高めていくための評価軸を、官民共同でつくっていく必要があると考えています。

──環境配慮の手段として木材の活用も視野に入れる必要がありますね。

久保(日本エンバイロケミカルズ) 木の効用には、森林におけるCO2の固定や水資源の貯留、山の表層土層の流出防止などを挙げることができます。癒やし効果や吸音性、遮音性、調湿性も期待できるし、リサイクルも可能です。木造建築が並ぶ景観は将来的には観光資源にもなり得ます。国産材を使うことで改めて森林・林業の振興ができれば、働く場の提供にもつながります。こうしたメリットをもっとPRしていく必要を感じています。

 解決すべき課題もあります。火災や地震に対する不安への対応が必要ですし、素材としての均質性に欠ける点も問題になることがあります。腐朽や蟻害を防ぐためのメンテナンスに手間を要するのではないかという心配の声も聞きます。そうした不安を取り除くために、建築工法に合った木材保護塗料や薬剤の使い方の提案、安全なシロアリ防除剤の開発も積極的に進めたいところです。

隈(建築家) 木は、街づくりと環境や文化の問題をつなぐ存在です。日本が蓄積してきた伝統や歴史的な資産を生かすことができる分野になります。木造建築をリーズナブルなコストで施工する技術や、不燃化などの技術も蓄積できているわけですから、強力な国際競争力が備わっているのだという認識を持つ必要があります。制度の改善も含め、積極的に取り組んでいただきたいところです。

──安全・安心を獲得するために、各種の防災対策も重大な課題です。

中村英夫氏/国土計画や交通計画の専門家。関連の様々な審議会委員や、世界交通学会、アジア交通学会、土木学会などの会長を歴任する(写真:都築雅人)
中村英夫氏/国土計画や交通計画の専門家。関連の様々な審議会委員や、世界交通学会、アジア交通学会、土木学会などの会長を歴任する(写真:都築雅人)

中村(東京都市大学) 以前提案した外堀通りの計画をお話しします。現在の日本の都市が抱えるハードウエア上の最大の問題は安全と都市景観だと思います。建物が無造作に建ち並び、一本裏に入ると防災上の脆弱性を持つ外堀周辺は、そうした意味でも手を加える価値のある場所です。

 提案では現在の外堀通りを地下に移し、その上の空間を人に開放しています。堀を大震災時の避難空間に当てるという考え方で、現在は急な外堀の法面を緩斜面に直し、簡単に水辺へ下りることができるようにします。水面は子どもたちが夏場に遊べる浅さに設定し、その下に貯留機能を確保するためのプールを設けるのです。

 これはあくまでも一案ですが、街としての景観を整えながら、安全・安心の機能を高めていく方法を積極的に考えなければなりません。

岸井(日本大学) 安全・安心を考える際に大切なのは持続可能性です。そのために、様々な意味での「控え」をつくる必要があります。

 幸い東京には最初の都心である丸の内に続き、西新宿、汐留・六本木などの新しい都心ができました。そのうちの大手町・丸の内・有楽町地域は30年かけた更新を終えようとしています。残りの2つを稼働させながら、30年に1度、順番に都心を更新すればよいわけで、こうした控えを用意することは、とても大切です。東京に対し、自然災害のリスクを指摘する声もありますが、それに耐え得る都市構造を備えていることを世界に訴えるべきではないでしょうか。

福田(東京都) 東京で重点的に考えなければいけないのが、木造密集地域の対策と幹線道路沿いのマンションなどの老朽対策です。緊急輸送道路沿いのマンションが災害時に倒れると、公共の機能上も大きな問題になります。都は沿道にある一定の建物の耐震診断を義務化する代わりに、補助や支援の制度を充実させています。対象となる建物のうち、既に7割ほどの耐震診断が終わりました。これらを耐震改修につなげるのが次の課題です。

 もう1つの木密地域対策としては、東日本大震災以降、都はまず延焼遮断帯として道路整備に取り組んでいます。従来はできなかった税制優遇も含め、手厚い支援策を用意しています。

──木密地域対策という面では、防火水槽の展開もありますね。

玉田善明氏/玉田工業。油、水、空気用の地下タンクのトップメーカーで、耐震性貯水槽、地下シェルターなどの分野も積極的に開拓してきた(写真:都築雅人)
玉田善明氏/玉田工業。油、水、空気用の地下タンクのトップメーカーで、耐震性貯水槽、地下シェルターなどの分野も積極的に開拓してきた(写真:都築雅人)

玉田(玉田工業) 耐震性を備える飲料水兼用防火水槽は、木密地域への設置が可能で、公共の土地には既に多く整備してきました。しかし、官の土地を対象にしたインフラ整備だけでは、そろそろ限界に来ています。今後は民間の協力を得ながら、集合住宅や複数の家屋が共同で1つの防災インフラを備える方式も必要でしょう。そうした啓蒙活動も含め、地域における防災性の向上に寄与していきたいと思います。

──耐震性の向上について、建物に関連した分野ではどのような取り組みが進んでいますか。

岡山俊雄氏/オイレス工業。1970年代に、いち早く免震・制震の技術開発に着手し、装置としての実用化の面でも市場をリードしてきた(写真:都築雅人)
岡山俊雄氏/オイレス工業。1970年代に、いち早く免震・制震の技術開発に着手し、装置としての実用化の面でも市場をリードしてきた(写真:都築雅人)

岡山(オイレス工業) 従来の免震装置は、建物を壊さないという目的で導入が進んできました。今はさらに施設としての機能や、水、電気、ガスを含む生活基盤を損なうことがないようなレベルが求められています。

 また、建物は壊れなくても、激しく揺れれば人は恐怖を感じます。人が恐怖を感じるような揺れ方はどういうものかを研究し、地震時にはむしろ室内にとどまってもらうようにすることも考えています。特に東京のように人口も建物も密集する場所では、重要な考え方になるのではないでしょうか。

桐井 隆氏/桐井製作所。天井を中心とする内装用の鋼製下地材を製造・販売し、耐震天井システムの開発にも、いち早く取り組んでいる(写真:都築雅人)
桐井 隆氏/桐井製作所。天井を中心とする内装用の鋼製下地材を製造・販売し、耐震天井システムの開発にも、いち早く取り組んでいる(写真:都築雅人)

桐井(桐井製作所) 近年、躯体の耐震性は高まりました。一方で、東日本大震災では非構造部材である天井の落下事故や崩落事故が多数発生しました。これを受けて法整備が進み、2014年春から空間の規模によっては、新築時にかなり厳しい規制がかかります。

 非構造部材に限らず、耐震性能の高い建物は地震の時に問題が起こりませんから、逆に性能の高さに気付いてもらえないことがあります。しかし、着物の裏地にお金をかけるのは江戸の粋といわれたように、目に見えにくいところにまでしっかりした品質を保つのが、日本文化のよさのはずです。天井を支持している見えにくい部分でも耐震性をしっかり確保していけるよう、そのための啓蒙活動に取り組んでいきたいと考えています。

山本強氏/地盤ネット。戸建て住宅向けの地盤対策を業務とし、消費者保護の立場から地盤補償サービスの分野を開拓してきた(写真:都築雅人)
山本強氏/地盤ネット。戸建て住宅向けの地盤対策を業務とし、消費者保護の立場から地盤補償サービスの分野を開拓してきた(写真:都築雅人)

山本(地盤ネット) 2000年に国が施行した住宅品質確保促進法以来、一般的な戸建て住宅では地盤の調査を行い、調査データに基づいて基礎と建物構造を設計することが当たり前になりました。ただ、2000年以前の住宅では、地盤調査をせずに建てたものも多数あります。今後の耐震化を考える際には、2000年以前に建った住宅の周辺地盤のチェックが重要になります。

 一般に開発後10年から20年を経た宅地では地盤の安全度が、かなり高まります。東京は軟弱地盤のイメージが強いですが、実際には50年以上たった宅地が多く、よい地盤の地域が相当あります。戸建て住宅の地盤対策の面でこれだけ進んでいる国も、なかなかありません。こうした安全性をアピールしていきたいと思います。

──安全・安心を考える際は、市場が伸張するICTの活用も非常に重要です。

小宮邦裕氏/ローム。半導体を中心とする電子部品のメーカーの立場で、都市に対する貢献を目指している。建設関連ではLEDを手掛けてきた(写真:都築雅人)
小宮邦裕氏/ローム。半導体を中心とする電子部品のメーカーの立場で、都市に対する貢献を目指している。建設関連ではLEDを手掛けてきた(写真:都築雅人)

小宮(ローム) ICTの将来を見据えると、最終的には人にどう安心をもたらすかに行き着きます。なかでも当社が注力しているのが、ICTセンサーネットワークと呼ぶ分野です。モニタリングして得たビッグデータを、どう活用していくかを提案しています。それも単にセンサーを売るのではなく、取得したデータをどう使っていくかというところまで踏み込んでいくことが大切だと感じています。

 例えば、今までエレクトロニクス業界があまり踏み込んでいない橋梁や住宅などの分野で、実デバイスを使う実証実験や共同開発ができれば、もっと使えるデータになると考えています。