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耐震は「命が守れる」以上の基準や表示が求められる

畠中 政府は耐震化率の目標を、2015年に建築物で90%、2020年に住宅で95%と定めています。

三上 昨年、小誌で調べたところ、東京都心5区にある中規模賃貸オフィスビルは、4分の1が旧耐震基準時代(竣工が1980年以前)のビルでした。

桑原 国交省によると、住宅は5年間で、約90万戸が建て替えられ、30万戸が改修されました。建て替えが耐震化に貢献しています。

三上 企業では東日本大震災以降、BCP(事業継続計画)の考え方が根付きました。中小規模の新築ビルでも非常用電源を導入するケースが増えています。

畠中 コンパクトシティ化で機能を集積すれば災害リスクも高まるので、特に都心の耐震に関しては、現在の建築基準法とは別のルールが必要だと感じます。

桑原 福岡市は条例で地震地域係数を国の基準より上乗せする地域を厳しく設定しています。リスクが高いところに、より厳しい対応を、という考え方はあっていい。

畠中 それと、安全性の高い建物がすぐ分かる表示制度も必要でしょう。

三上 「水平耐力が1.25倍!」と言われても、テナント側にはそれがどんな水準なのか、伝わらないですよね。

桑原 建築基準法が想定する「人命が守れる」以外の基準や説明が欲しいところです。「倒壊はしないが使えなくなる」とか「事業を継続できる」とか。

畠中 建物レベルでは、地震の被害をリアルタイムに推定して、電子掲示板に表示するものも出てきた。マンションでは、東京都新宿区のトミヒサクロスで導入されます。電子掲示板の前に住人が集まって、自然に安否確認も進むでしょうし、面白い取り組みですよね。

 ここまでさまざまな観点から議論をしましたが、2020年をターゲットにしながらも、その後に何を残すかが極めて重要になります。人口は減り、ストック活用の重要性が高まり、その一方でエネルギー効率を上げなければならない、そういう時代を迎えています。そのなかで建築・土木界も、使い手本位のサービスへいかに転換するか。成長期の惰性を振り払い、成熟期にふさわしい新たなシステムを組み直して次代に引き継ぐことが、我々の務めになると思います。