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疑問符の付く要望と葛藤しながらの提案も

 実例を2つほど紹介したい。1つ目は、広島県の厳島(通称、宮島)に県が計画したプロジェクトだ。宮島にある標高535mの弥山の山頂を敷地とし、瀬戸内海を望む展望台をつくるというもので、県が地元の5人の設計者を指名してプロポーザルを実施した。

 計画地の弥山に登ってみると、風景の素晴らしい場所で、私の第一印象は「すでに展望できている」だった。しかし、「展望台は必要ない」という提案ではプロポーザルに勝てない。現状でも十分に展望できる場所に、展望台を提案しなければいけないというのも情けない話だった。しかも、募集要項には、デザインは「和風」という指定まであった。

 悩んだ揚げ句、私たちはこう考えた。和風と指定した目的は、風景との調和だろう。とすれば、必ずしも和風である必要はない。風景に溶け込む「透明な展望台」でもよいのではないか。それならば、展望台が欲しいという広島県の要望も、展望台は要らないという私たちの意見も満たせる。

 提案したのは、エキスパンドメタルを使う展望台だった。遠目には風景が透けて見えるほどかすんでいるが、近付いていくとその形が浮かび上がってくるというものだ。自信を持って提案したが、残念ながら、要項に従って和風のデザインを提案した設計者に負けてしまった。

厳島(宮島)の弥山山頂に計画された展望台のプロポーザル案。展望台はいらないという見解に立ち、エキスパンドメタルによる透明な展望台を提案した(資料:Suppose design office)
厳島(宮島)の弥山山頂に計画された展望台のプロポーザル案。展望台はいらないという見解に立ち、エキスパンドメタルによる透明な展望台を提案した(資料:Suppose design office)

 プロポーザルというのは求められた通りの提案でないと勝てないが、求められた通りに考えることほどつまらないことはない。どちらの線で攻めるべきか、いつも悩みながら取り組んでいるが、自分たちがよいと思う案を出すので結果として負けることが多い。