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~半世紀を経た“マンションのいま”を語り続けることができた2年半~

    村井 忠夫


◆「これから」という言葉で語り続けていつのまにか2年半

 「これからのマンション管理を考える」というタイトルの対談シリーズが始まったのは2006年5月だった。実は、その時、タイトルの「これから」というのがどのくらいの期間をさすのか深く考えもしないままだった。結果からいえば、その「これから」は2年半に及ぶ長さになった。対談にご登場いただいた方は15人。
 「これから」の2年半、いろいろなことがあった。正直なところ、答が見つかりにくい難しい問題が一挙に増えた感じで、この2年半は想像以上に大変な時期だったという気がする。それだけに、15人もの方々と様々な対話を展開できたことが望外の幸せだったと実感する。
 この実感は、単純なものではない。マンションの管理にかかわり始めてから30年近い間、原稿執筆や講演活動など大抵のことに携わってきたが、対談という形の活動をこんなに長い期間にわたって続けたのは初めてだった。たぶん、それは私自身にとって初めてであるだけではないだろう。マンション管理だけをめぐってこんなに長く対談を続けた例は、十中八九、日本のマンション史上初めてだったに違いない。

◆対話者に恵まれた幸運、語る場に恵まれた幸運

 そう考える理由は、いくつもある。第一に、マンション管理という視点で対話を展開できるだけの関心を持つ人の広がりが思い浮かぶ。一昔前だったら、この企画は難しかったかもしれない。15人の中には必ずしもマンション管理を専門とされない方もおられたが、そういう方は視点に制約されない斬新な見方を語られたし、マンション管理を専門とされた方は年数の経過とともに深くなっていく問題の意味を共感していただいて、どれほど意を強くできたかわからない。
 理由の第二は、ほかならぬこの「マンション管理新時代」という媒体そのものの存在だ。ある意味で、マンション管理ほど関連するメディアに恵まれないジャンルはなかったような気がするこの数十年だったが、メールマガジンの登場というかつて想像しなかったスタイルで展望が開けた。そのことに、この長期対談が幸運な形でうまくつながったからこそ、この2年半があったと思う。

◆対談を一人対一人の会話で終わらせたくないと思い続けてきた2年半

 30年近く書いたり話したりする活動を続けてきたあとで、こんな幸せな機会に恵まれようとは夢想もしなかった。
 しかし、この幸せを、単なる個人的なレベルの実感にとどめたいとは、正直なところ思わない。2年半の対話で展開してきたのは決して一人対一人の会話ではなかったと思いたいからである。
 これまで、私たちのマンションのとらえ方は、建築物や不動産としての視点に集中しすぎてきた傾向はなかっただろうか。マンションは、まず人の住む場所なのだ。そうであるならば、そこに住む人の数だけのとらえ方がマンションにはあるはずだ。
 いままで、そのことは漠然と認識されてはいても、身近な日常的レベルでとらえられることがなかった。棚に上がったままだった。その間に年数がたち、いま紛れもない高齢化社会がやってきている。 
 そのことがはっきりしているなら、いま必要なことは、マンションに住む人間同士の考え方の確認だろう。この確認の方法は、対話をおいてほかにはない。
 そういう実感を2年半の対談を読んでくださった方に感じ取っていただきたいと思い続けてきた。いま展開している対話の内容が読者の感性のアンテナに受け止められて、どこかでさらに発展すればといつも思ってきた。この願いは、実現しただろうか。

◆2年半の対談で浮かび上がってきた課題。本当の意味での「これから」は?

 昔はあまり考えなかったことが、近年にわかにのっぴきならぬ課題となって急浮上してきた感がある2年半だった。15人の方との対話で何度もふれることとなった「管理者管理方式」は、その典型例である。高齢化対応や危機管理なども、同じだ。いずれも、まだ日本中のマンションが新しくて区分所有方式の原則さえ守っていればよかった時代には考え及ばなかった課題ばかりである。
 どの課題も、いまは、まだ答が見つかっていない。簡単には見つからない可能性も大きい。その間に、また次の課題が浮上するかもしれない。
 難しい課題があって解決できないで時間がかかっている状態に、新しい課題が重なってさらに難しさが増幅することをいやになるほど痛感する時代だ。マンション管理が、その例外であり得るわけがない。
 でも答は見つけなければならない。年数がかかっても…。2年半も続けてきた長期対談のタイトルの「これから」という言葉の重みが、いまあらためて浮かび上がってくる。

◆対談は組織集団作業の支えがあってこそ成り立つ。マンション管理も同じ

 対談というスタイルの記事は、実はけっこう手数がかかる。企画から対談へ、対談から文字起しへ、文字起こしからアレンジへという一連の流れがつねに変わらないペースで支えられていなければならない。この支えは、対談の中身に通り一遍でない関心を向け続ける人がいなければとても実現しない。
 2年半にわたってそういう意味での支えを果たしていただいた編集担当の村田真氏には、ただ感謝の一語に尽きる念をお届けしたい。また、この企画の初期段階で対談の方向を確かなものに設定していただいた青木健氏にも、あらためて感謝の念を深くする。
 対談というスタイルの仕事は机をはさんで話し合っている対話者だけのものではなくて、その前後の関係者全員の集団作業の支えで成り立っている。その実感は、マンション管理が組織集団レベルで進められなければならない実感と、まさに相通じるものなのだ。

 この対談は今回一応のピリオドを打つこととなるが、機会あって、どこかで、誰かの手で、2年半にわたって語ってきたことが次のステップに発展することを期待したい。
前向きに考えることが、マンション管理の展望を支えるのだから。