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借金時計で市民に啓発

─そうすると、合併特例債の利用が困難になるというリスクを抱え込むことになったのでは。

山中 確かに合併特例債は有利な起債と思われています。しかし、合併特例債の期限が迫っているという理由で、中身を十分に議論しないまま建て替えを急ごうとするのは、あまりに安易です。東日本大震災を口実に、しっかりとした議論を重ねずに庁舎を建て替えようとする発想も同じ。財政計画や市民の合意を積み重ねてから進めていくことが大切なのです。

 耐震化を図るべき建物は、庁舎だけではありません。公共施設はほかにも存在し、さらには民間の住宅だってすべての耐震化が終わっているわけではない。何のために庁舎を優先するのかというレベルから市民と対話していくことが必要なのです。

 それに、合併特例債は借金だということを理解しなくてはいけない。国が交付税を満額払えなくなってから10年たちます。不足分を臨時財政対策債という地方の借金で補っているのが実情です。国はこの借金を交付税として将来支払うと説明していますが、現在の交付税ですら払えていない。この臨時財政対策債は、3年間の時限措置だったものを継続してきている。将来、本当に払えるのか。次の世代のことを考えれば、起債前提の事業ではなく、必要性を市民と議論した上で基金を積み上げていくようなことが大切でしょう。

 松阪市では、市庁舎の玄関に「借金時計」を設置しています(写真1)。借金が積み上がったのは、行政や政治だけの責任ではありません。市民からの要望を聞いてきた結果でもあるのです。借金が増えるにしろ、減るにしろ、市民自体にその責任や役割を認識してもらう。そのために設置しました。時計自体は百五銀行からの寄贈品です。事業の見直しなどを進めた結果、現在の松阪市では借金を減らしています。

写真1 市の借金を市民に知ってもらう
松阪市役所の玄関に設置された借金時計。時間経過と共に借金の額が変わる。2012年4月3日時点で、1秒当たり約67円の借金を減らしていた(写真:日経アーキテクチュア)
松阪市役所の玄関に設置された借金時計。時間経過と共に借金の額が変わる。2012年4月3日時点で、1秒当たり約67円の借金を減らしていた(写真:日経アーキテクチュア)