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大林組が考えた施工法は、地上で組み立てたゲイン塔をリフトアップし、その時間差を利用して工期短縮を図るもの。「需要の少ない技術を磨き続けたから実現できた」。施工担当者はこう言って胸を張る。

 「一般的な方法で施工していたら、1年くらい余分に掛かったのではないか」。大林組技術本部企画推進室の田村達一副部長はこう推測する。

 約3年半という限られた期間で600mを超えるタワーを施工するために、大林組が考えたのは大まかに次のような手順だ。

 初めは塔体の鉄骨を地上から徐々に組み立てる。天望デッキ(第1展望台)を超えたころから、塔体中心部の空洞を利用してゲイン塔を組み始める。塔体とゲイン塔が組み上がったら、ゲイン塔をリフトアップ工法で一気に引き上げる(技術11)。高さ634mに向けて突き出している間に、今度は塔体中心部に制振装置である「心柱」を打設していく。

 「塔体の建て方」と「ゲイン塔の組み立て」、「ゲイン塔の突き出し」と「心柱の構築」を同時に進めることで、工期短縮が可能になる。

 田村氏によれば、オーソドックスな建て方は以下のような流れになるという。塔体の鉄骨を、天望デッキ屋上の高さである375mまで組み上げ、同時に心柱を打設する。天望デッキの上で、ゲイン塔と塔体の鉄骨組み立てを同時に進め、最後にゲイン塔を引き上げる。

 「このやり方だと、ゲイン塔の部材を375mの高さまで吊り上げる必要がある。強風が吹いたら作業はできない。地上で組み立ててリフトアップすれば、風に対するリスクがかなり減る」(田村氏)

 今回の手順にはもう1つメリットがある。ゲイン塔の組み立てを地上で行うので、作業環境が劣悪な高所の作業ヤードよりも品質管理や安全管理が容易になる。

(資料・写真右:大林組 写真左:大村 拓也)
(資料・写真右:大林組 写真左:大村 拓也)

心柱の工期が肝

 大林組がこの手順を採用できたのには、もう1つのカギがある。心柱を短期間で打設するスリップフォーム工法の存在だ(技術12)。

 ゲイン塔を塔体中心部の空洞で組み立てる今回の手順では、ゲイン塔を引き上げた後でなければ心柱に着手できない。足場や型枠の構築、コンクリート打設、脱型などの各工程を別々に進める従来工法では、工期に間に合わない可能性が高かった。

 スリップフォーム工法は、工種ごとに作業床を設け、型枠をスライドさせながらコンクリートを打設する。効率の良い施工が可能だ。この工法のおかげで、心柱を工期どおりに構築できた。

 この工法は、1970年代ごろに煙突などを建設するために開発された技術で、煙突などの需要が少ない現在では、採用されるケースが少なくなっていた。田村氏は「需要の少ないこの技術を捨ててしまった建設会社は多い。リフトアップ工法もそう。当社は『特殊工法部』で磨き続けた。それがスカイツリーの施工で非常に役に立った」と胸を張る。