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建設会社に比べ、設計事務所のBIM利用は一、二歩遅れている観が否めない。その背景には、設計段階で作成したBIMモデルが施工にうまく引き継がれないことがある。大手各社は、設計者のメリットを模索している。

 「設計事務所のつくったBIMモデルは施工に使えない」。ある大手建設会社のBIM推進担当者はきっぱりと言った。設計事務所と施工会社のBIMモデルでは、入力項目の違いが大きく、施工側で最初から入力した方が早い─。「現時点では」の限定付きだが、設計事務所と建設会社の間に情報伝達の壁があることは察しがつくだろう。

 そんな状況に国土交通省主導で活路を見いだそうとするプロジェクトが進んでいる。その1つが新宿労働総合庁舎だ(図2-1)。国交省官庁営繕部は2010年3月に「官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクトの開始」を発表。BIMが普及していない状況を考慮し、同省はまず設計段階に絞って、いくつかプロジェクトでBIM活用を発注条件に加えることにした。同省大臣官房官庁営繕部整備課の吉野裕宏施設評価室長は、「最終的には施工から維持管理まで一貫してBIMモデルを使うことで、品質を確保しながらコスト削減することを可能にしたい」と目的を説明する。

図2-1 国土交通省が設計事務所のBIM利用を後押し
国交省官庁営繕部が手掛けるBIM導入プロジェクトの第1弾となる、新宿労働総合庁舎の完成予想パース。設計者の梓設計がBIMモデルを作成した。右はBIMモデルを用いて実施したシミュレーション画像。現在、施工中で、2013年3月に竣工する予定(資料:梓設計)
国交省官庁営繕部が手掛けるBIM導入プロジェクトの第1弾となる、新宿労働総合庁舎の完成予想パース。設計者の梓設計がBIMモデルを作成した。右はBIMモデルを用いて実施したシミュレーション画像。現在、施工中で、2013年3月に竣工する予定(資料:梓設計)

 同省は10年6月、試行プロジェクトの第1弾となる新宿労働総合庁舎のプロポーザルを公示した。庁舎としては標準的なRC造地下1階、地上6階建て、延べ約3500m2。基本設計段階でのBIMモデルの作成を設計の発注条件とした。法規制などの設計与条件を整理し、建築可能範囲を可視化することや空間ゾーニング、日影解析なども条件に含まれた。