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企業の枠組みを越えて連携

 民間のプロジェクトでも先駆的な取り組みが出てきた。設計のBIMモデルが施工段階で確実に使えるように、施工者も巻き込んでBIM化を進める─。日建設計が設計を手掛ける、「北里大学病院スマート・エコホスピタルプロジェクト」はそんな試みだ(図2-3)。

図2-3 施工者を巻き込み、大規模病院の実施設計をBIMで進める
北里大学病院スマート・エコホスピタルプロジェクトの完成予想図。延床面積9万2700m2。地下1階・地上14階建てで、RC・SRC造。免震構造を採用している(資料:日建設計、竹中工務店、スリーディーイノベイションズ)
北里大学病院スマート・エコホスピタルプロジェクトの完成予想図。延床面積9万2700m2。地下1階・地上14階建てで、RC・SRC造。免震構造を採用している(資料:日建設計、竹中工務店、スリーディーイノベイションズ)

 北里大学病院は09年に実施したプロポーザルで日建設計を選んだ。しかし、この段階でBIMの利用が条件に入っていたわけではない。日建設計設計部門副代表の藤記真氏は、「BIMは、コンピューターの中で建物として実際に成り立つかどうかが検証できる。それは大きなメリットだ」と話す。提案書には盛り込まなかったものの、独自にBIMの利用を決めていたところ、ちょうど北里大学病院でもBIMを検討していた。両者の考えが一致し、基本設計では意匠で、実施設計では意匠、構造、設備全てでBIMを導入することになった(図2-4)。

図2-4 意匠、構造、設備の「フルBIM」に挑む
BIMの画面例。図面や3次元のパースを基に詳細な検討を前倒しで実施した(資料:日建設計、竹中工務店、スリーディーイノベイションズ)
BIMの画面例。図面や3次元のパースを基に詳細な検討を前倒しで実施した(資料:日建設計、竹中工務店、スリーディーイノベイションズ)

 今回のプロジェクトでは、発注者の意向から基本設計が終了した時点で施工者選定を実施した。ここでもBIMは選定条件に入ってなかったが、施工者に決まった竹中工務店、きんでん、東洋熱工業の3社と交渉し、一丸となって、BIMによる実施設計に臨んだ。

 施工者と調整を図りながら実施設計を行ったことで大きな効果があった。特に設備では、梁と配管などの干渉チェックを、あらかじめBIMで行うことができた。これまでは専門工事会社の職人ノウハウに依存する部分が多く、施工段階に入ってから、職人に指摘されて初めて設計者が頭を悩ませていた領域だ。今回のプロジェクトではこうした手戻りが「格段に減った」(藤記氏)と言う。

 メリットは他にもある。このプロジェクトでは配管が通常時にきちんと納まっているだけでなく、地震で免震装置が動いたときに配管が壁や梁に当たらないことを検証した(図2-5)。藤記氏は「設計段階で納まりのリアリティを高めた意義は大きい」と強調する。

図2-5 地震時の配管の動きも確認
通常時のシミュレーションで配管の納まりを確認しただけでなく、免震装置が動いた際、配管が壁や梁に当たらないかまで確認した。BIMを用いない設計では設計過程でここまで検証するのは難しい(資料:日建設計、竹中工務店、スリーディーイノベイションズ)
通常時のシミュレーションで配管の納まりを確認しただけでなく、免震装置が動いた際、配管が壁や梁に当たらないかまで確認した。BIMを用いない設計では設計過程でここまで検証するのは難しい(資料:日建設計、竹中工務店、スリーディーイノベイションズ)