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設計だけでも使う価値大

 北里大学病院のケースは発注者が民間だからできた取り組みだ。実施設計終了後の施工者選定を原則とする公共建築で同じことをするのは難しい。仮に施工会社と共通のBIMモデルで作業できても、最初に入力の負担がかかる設計事務所には、そのための費用増を設計料に上乗せしにくいという現実がある。どうすればスムーズに施工につながるBIMモデルをつくることができるのか、そのためのフィーをどうするのかが設計事務所の抱える課題と言える(図2-6)。

図2-6 設計事務所のBIM活用の課題
(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)

 そんななか、「生産の効率化をBIMの第一目標と考えるのは違うのではないか」と話すのが、日建設計の設計担当執行役員である山梨知彦氏だ。09年ごろから本格的にBIMに取り組み、現在は同社のデジタルデザイン室長を務める。同氏はこう語る。「BIMは直感や経験則をデータで示し、何度もシミュレーションできる。試行錯誤を繰り返せば必然的に設計そのものの品質を上げることができる」

 山梨氏の言う設計の品質は意匠だけではない。「BIMは情報のデータベース。例えば、建材に関わる不具合の情報を入力しておけば、この材料をこうして使ってはまずいとすぐに分かる。結果的に信頼向上につながる。設計だけでもBIMを使わない手はない」と断言する。

 もちろん山梨氏もBIMモデルを施工段階で使うメリットは認識している。しかし「そこでも重視されるべきは効率化よりも高品質化。安く、早くよりも“今までにない価値”をどう加えられるかに目を向けるべきだ」と話す。安井建築設計事務所が竣工後のFMでの利用を検討しているように、BIMは設計事務所に新たなビジネスの種をもたらす可能性を持っている。