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「同じ住宅で親と同居」が条件

 この同居問題は複雑なので、実例を通して見ていこう。

 3年ほど前、当時43歳のAさんが自宅の建設について、私のところに相談に訪れた。子どもが小学校に入学するのを機に、自宅を建てたいと言う。

 既に父親は亡くなっており、目黒区にある敷地面積400m2の自宅に母親が住んでいた。母親も80歳近くになっていたので、その敷地の一部に一人息子のAさんが別棟で自宅を建てる計画を立てた。母親の面倒も見られるし、自宅建設のために別途土地を購入する必要もなくなり、一石二鳥だと考えたのだ(図5)。

図5 二世帯住宅に同居すれば相続税減額
実家と同じ敷地内でも、別棟の自宅を建て、親と同じ建物に住まない場合、相続税の評価減の特例を受けられない。実家を増築して、二世帯住宅にして親と同居すると、評価減の特例を受けることができる(資料:アークブレイン)
実家と同じ敷地内でも、別棟の自宅を建て、親と同じ建物に住まない場合、相続税の評価減の特例を受けられない。実家を増築して、二世帯住宅にして親と同居すると、評価減の特例を受けることができる(資料:アークブレイン)

 しかし、この考え方には相続税対策上の問題がある。相続前にAさんが自宅を親の敷地内に別棟として建築すると、たとえ同じ敷地内であっても小規模宅地の特例を受けられなくなる。つまり、別棟に住んでいる限り、それは同居しているとはみなされない。

 Aさんの実家の土地は、前面道路の路線価が50万円/m2。土地だけで2億円の相続税評価額となる。父親が亡くなったときには、配偶者である母親が相続したので配偶者控除によって相続税の問題はほとんど起こらなかった。

 しかし、こうした控除は子どもにはない。そのため、母親が亡くなったときには、この土地に小規模宅地の特例を適用できるかどうかが、税額に大きな影響を与える。

 従来は、相続人である息子のAさんが自宅を引き継いで住めば、この特例の適用を受けられた。特例の適用を受けた場合の相続税評価額は1億400万円となり、もとの相続税評価額の2億円と比べて、9600万円も減額できた。

 しかし、Aさんが敷地内に別棟の自宅を建ててしまえば同居とみなされず、母親が亡くなったときに敷地を相続しても、Aさんは小規模宅地の特例を受けられなくなる。このままでは相続税評価額は2億円のままになる。

 そこで、母親が所有する敷地内に別棟で自宅を建てるのではなく、母親が所有する住宅を増築して二世帯住宅にすることを提案した。こうしておけば将来、母親が亡くなってAさんが敷地を相続した場合、Aさんは被相続人である母親と同居していた親族として、小規模宅地の特例を受けられる。

 なお、これまでの税制では、二世帯住宅内において、親が居住している部分と子どもが居住している部分は自由に行き来できる必要があった。改正税制では、行き来できなくても同居していると認められるようになった。

 この改正は、14年1月1日以降の相続から適用される。

 Aさんが私たちのアドバイスに従って実家を増築し、二世帯住宅を建てたときは当然のことながら、改正前だった。母親と同居していると認められるように、Aさんと母親とが居住する部分を互いに行き来できるしつらえとして、間仕切り壁に扉を付けた。