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大規模木造ブームの教訓

 木質構造デザイン工学を専門とする腰原幹雄・東京大学生産技術研究所教授は、「80年代末にあった大規模木造ブームのことを思い返す必要がある」と語る。

 1987年の建築基準法改正により大断面集成材を用いた大規模木造建築が可能になった。88年に「ふるさと創生1億円事業」が実施されたこともあり、90年代初頭にかけて地方都市で木造のドームや体育館が数多く建設された。しかし、それがその後の木材需要の拡大に結びついたとは言いがたい。

 「日本の木造建築は屋根の架構美を見せるという考えが強く、床や壁で木を使う技術の研究がほとんど進んでいない。もちろん屋根の架構で目を引くことは重要だが、ベースとなる部分でコストダウンを進めないと、あの時の繰り返しになる」と腰原教授は危惧する。

 さらに「必ずしも構造材にこだわる必要はない」とも言う。「一般の人に木の魅力をアピールするならば、もっと内装や外装に使うことを考えるべきだ。それには、一般の人が木の経年変化をどう受け止めるかを知っておく必要がある」。木材は屋外で使えば、変色は避けられない。美観上、どの程度まで許容されるのか。腰原氏は定量的な調査が必要と考え、研究室で取り組み始めたところだ。

 外装木材の経年変化を見るうえで、面白いプロジェクトがある。大阪市西区の大阪木材会館だ(写真8-1)。ここでは既存の鉄筋コンクリート(RC)造、6階建てビルの道路側の外壁全面をスギ板で覆った。経年変化を見るため、積層張り、無双張りなど6種類の張り方でパッチワークのように構成した。2011年の改修完了から2年がたち、張り方による変色の差がはっきりと表れている。

写真8-1 板の張り方で明らかな差が生まれる
大阪木材会館の外装改修直後(2011年、左)と現状。熱処理を施した高耐久木材(越井木材工業のサーモウッド)をユニット化し、既存のタイル外壁の上に取り付けた。外装設計は河井敏明・河井事務所代表が担当。そもそもはヒートアイランド対策のための調査事業だったが、「木材の張り方による変化の違いも検証できるようにした」(河井氏)(写真:左は平井 広行、右は日経アーキテクチュア)
大阪木材会館の外装改修直後(2011年、左)と現状。熱処理を施した高耐久木材(越井木材工業のサーモウッド)をユニット化し、既存のタイル外壁の上に取り付けた。外装設計は河井敏明・河井事務所代表が担当。そもそもはヒートアイランド対策のための調査事業だったが、「木材の張り方による変化の違いも検証できるようにした」(河井氏)(写真:左は平井 広行、右は日経アーキテクチュア)