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地域密着型企業にもチャンス

 ビッグデータという言葉にはワクワク感がある。どのように扱うか、ストーリー立てが建築サイドに無ければならない。技術に振り回されてはいけないが、使い方を誤らなければ、人を幸せにできる可能性があるだろう。

 建築の中には生身の人間がいて、それぞれが独自の人生観と感性を持っている。こうしたことを大事にしながら、ビッグデータを使いこなすことが未来を開く。

 ビッグデータ活用の恩恵を受けるのは大手の設計事務所や建設会社だけではない。地域密着型の設計事務所や工務店、中小建設事業者にも活用メリットがあると思う。

 センシング技術を使って、地元のユーザーの行動履歴や特性データを集めることが容易になる。多数の中小事業者が参加すれば、大手建設会社1社が抱えるよりも膨大なデータを集めることができるかもしれない。そのビッグデータを解析できる組織と協力できれば、地域密着の企業にとっては、きめ細かいサービスを提供できるようになる。

 これは、住宅の設計に生かすことも可能だ。例えば、高齢化が進むなか、住宅をどう使いこなすかは大事な問題。個々人に合ったテーラーメードオペレーションが最も必要とされる世界だ。

 高齢者や介護者の状況を踏まえ、ソフト、ハードをどう組み合わせていくか。サービスする人、建築実務者、ユーザーの間でやり取りして設計の細部を詰める。竣工後も高齢化の程度に応じて使い方を最適化していく。こうした生産的な行為につながる成功例が出てくるのではないか。

人の活動をデザインせよ

 ビッグデータの可能性の1つは、建築と人間の関わり方を個別適合できるということだ。住まい手、使い手の行動特性、身体特性に合ったように環境調整できる。今はセンシングが注目されているが、解析技術が進展すればテーラーメードのオペレーションが可能になる。

 建築でやるべきことは、賢い使い方を提示することだ。単にハードをつくるのではなく、アクティビティーを生み出すことが大事だ。そこにデザインが必要になってくる。ITと建築をどう融合させていくか。どう機能させるか、構想をつくり明示し、コーディネートする。広い意味のデザイナーが必要だ。誰かがやらなければいけない。人間がどう生きていくかという感覚や洞察力が不可欠だが建築界には分厚い人材がいると思う。

 今はばらばらの単なる情報でも、合わせていくと意味のあるデータになる。今までの建設産業の枠を超え、例えば介護や見守り、医療分野のデータにもなる。建築をどう賢く使うか、様々な利害関係者が社会的な合意の下でデータを使い回すことが起こるだろう。膨大なデータは資産であり、新たなビジネスモデルの土台となる。(談)

野城 智也
東京大学生産技術研究所教授
柴崎 亮介 建築の持続可能性に関わるデータが、必要な局面で容易に入手できる「情報埋め込み建築」の研究・技術開発に携わる。エネルギー使用量の見える化によるエネルギー・マネジメント・システムの開発と実装にも取り組む(写真:日経アーキテクチュア)