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「部下は必ず上司の前を通る」

 2009年の完成からオフィスを使い始めて約4年。建築主の東芝電力システム社の石崎昌之・生産統括責任者は、「この座席配置のもとでは、部下はトイレに行くときも、席に戻るときも、必ず上司の前を通ることになる。すると自然と会話の機会が増え、相互のコミュニケーションが活発になる。若手社員に尋ねると『上司に対する精神的なハードルが下がり、声をかけやすくなった』という声が多い。社員の評判は上々だ」と話す。

 この独特の座席配置は、設計を担当した鹿島の建築設計本部が同社技術研究所と共同で提案した。鹿島は、発注者を説得するために、勘や経験ではなく客観的なデータに基づくシミュレーションを提示した(図2-1)。

図2-1 管理者席をフロア中央に置いたほうが交流頻度は増える
鹿島は発注者に2案を提示。A案は、管理職の座席を窓側に置いた従来のプラン。B案は、フロア中央に置いた新プラン。シミュレーションの結果、B案の会話頻度はA案より約7割増えると出た(資料:鹿島)
鹿島は発注者に2案を提示。A案は、管理職の座席を窓側に置いた従来のプラン。B案は、フロア中央に置いた新プラン。シミュレーションの結果、B案の会話頻度はA案より約7割増えると出た(資料:鹿島)

 比較用に示したプランは2つ。1つは管理者を窓側に配置する従来型のプラン。もう1つはフロア中央側に配置する新プランだ。このオフィスでは、フロア中央付近に打ち合わせスペースや吹き抜けの階段を置き、社員の交流を促すゾーンを設けている。新プランは、ここに管理職を配置することで、社内の交流機会を増やすことを狙った。この2案で、利用者同士の会話頻度をシミュレーションした結果、新プランが7割程度多かった。

 発注者側の石崎統括は「我々の実感としては、会話の頻度は以前の2倍以上に増えた。原子力発電所のような巨大施設を設計する我々にとって、あらゆる部署間で緊密な意思疎通を図ることは何より重要だ。新レイアウトの波及効果は非常に大きい」と言う。