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無視できない長期荷重の影響

 次に、長期荷重による影響について述べる。壁部材では長期荷重による応力は小さく、ひび割れへの影響はほとんど無視できる。ところが、床スラブでは、その影響が無視できないほど大きい。

 図3は、床スラブの引張応力の分布を表している。(1)は収縮を拘束して生じる引張応力で、部材断面で一様となる。(2)は長期荷重(自重)の曲げモーメントによる引張応力の分布を表す。これは梁端部で上側、中央部で下側に生じる。(1)と(2)を合計した引張応力は、梁の端部と中央部で卓越するので、梁端部にはスラブ上面、中央部ではスラブ下面にひび割れが生じやすい。スラブ上面のひび割れは目立つので、梁端部のひび割れがよく問題になる。

図3 床スラブの内部応力が大きくなる理由
床部材には拘束変形による引張応力と、固定荷重の曲げモーメントによる引張応力がかかる。両方を合計した引張応力が生じることになり、その分、ひび割れが発生しやすくなる(資料:閑田 徹志)
床部材には拘束変形による引張応力と、固定荷重の曲げモーメントによる引張応力がかかる。両方を合計した引張応力が生じることになり、その分、ひび割れが発生しやすくなる(資料:閑田 徹志)

 図4は床スラブ上面のひび割れを平面図に記したもので、大梁位置の材軸に沿ってひび割れが発生している状況が分かる。

図4 大梁位置の材軸に沿ってひび割れが多発
床スラブでは、梁際とスパン中央の断面で引張応力が大きくなるため、大梁位置の材軸に沿ってひび割れが多数発生していることが分かる(資料:閑田 徹志)
床スラブでは、梁際とスパン中央の断面で引張応力が大きくなるため、大梁位置の材軸に沿ってひび割れが多数発生していることが分かる(資料:閑田 徹志)

 ちなみに、床の構造や形状で比較すると、筆者の経験では、鉄筋コンクリート(RC)の一般構造スラブが最もひび割れの不具合が少ない。これは、ひび割れ幅を0.3mm以下に制御するため、鉄筋比を原則0.4%以上確保することが推奨されているからだと推測される。

 日本建築学会の「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説2010」では、RCスラブの構造設計上、長期荷重による梁際の引張応力をひび割れ強度以下に収め、長期荷重による応力だけでは、ひび割れ強度を超えない配慮がなされている。ただし、その場合も、図3の(1)と(2)を加算するとひび割れ強度を超過する傾向があり、実際にはひび割れが避けられない設計が多いことに注意したい。