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異形断面デッキスラブに注意

 図5の異形断面のデッキスラブでは、ひび割れ幅の拡大により不具合リスクがさらに深刻となる。そもそも、異形断面デッキスラブは一方向スラブとして設計され、弱軸方向(x方向)については詳しく検討しないことが普通で、鉄筋量も少ない。

 特に、異形断面床部材では、弱軸方向の鉄筋は溶接金網が配置されるのみで、図6のようなひび割れが発生すると大きく拡大し、幅が1mmを超える場合もある。そのため、図7のように大きな幅のひび割れが多発する状況となる。

図7 幅0.5mm以上のひび割れが床スラブで多発した例
条件によっては、床部材では幅0.5mmのひび割れは必ずしも瑕疵とは言えない(資料:日本コンクリート工学会「高性能膨張コンクリートの性能評価とひび割れ制御システムに関する研究委員会報告書」p433-438、佐竹ほか)
条件によっては、床部材では幅0.5mmのひび割れは必ずしも瑕疵とは言えない(資料:日本コンクリート工学会「高性能膨張コンクリートの性能評価とひび割れ制御システムに関する研究委員会報告書」p433-438、佐竹ほか)

 ここで注意すべきは、図7のような状況は、施工者が最大の努力を払っても起こり得ることであり、必ずしも瑕疵とは言えないことである。図7には0.5mmを超えるひび割れが多くあり、国土交通省告示1653号の規定をそのまま適用すると瑕疵の可能性が高いと判定される(なお、デッキスラブは、住宅には通常採用されないので告示1653号の適用外とするのが一般的)。

 しかし、そもそも異形断面デッキスラブは、幅0.5mmを超えるひび割れが発生しやすい仕様である。この点は、建築主、設計者、施工者との間で事前に協議しておく必要がある。このほか、典型的なひび割れとして、ハーフプレキャスト(PCa)版を用いた床スラブに生じるPCa版の継ぎ目上のひび割れがある(図8)。このひび割れは、床スラブを貫通するので下階へ漏水しないように配慮が必要である。

図8 プレキャスト版の継ぎ目上に発生するひび割れによる漏水リスク
このタイプのひび割れは、床スラブを貫通して下階に漏水する恐れがあるので注意が必要である(資料:閑田 徹志)
このタイプのひび割れは、床スラブを貫通して下階に漏水する恐れがあるので注意が必要である(資料:閑田 徹志)

閑田 徹志(かんだ てつし)
閑田 徹志(かんだ てつし) 1963年生まれ。九州大学大学院修士課程、ミシガン大学博士課程を修了。現在、鹿島技術研究所建築生産グループ上席研究員。2008年に「鉄筋コンクリート構造物のひび割れ制御を目的とした解析技術とその応用に関する研究」で日本建築学会賞(論文)を受賞