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3割超が月80時間以上残業

 年収への最大の不満は、こなす仕事量の多さにある。大手設計事務所で管理職を務める49歳の設計者は、「ここ2~3年で規模の小さな改修物件が増え、いずれも手間のかかるものばかりだ」とこぼす。

 厚労省の調査によると、12年における一級建築士の1カ月当たりの労働時間は183時間(図1-12)。わずかではあるが、年々増える傾向にある。医師や弁護士と比べても10~15時間ほど長い。

図1-12 労働時間は医師や弁護士より長い
一級建築士、医師、弁護士の1カ月当たりの労働時間の推移。厚生労働省が毎年実施する賃金構造基本統計調査より抜粋。1カ月の所定内実労働時間と超過実労働時間の合計。12年は一級建築士が183時間なのに対し、医師は174時間、弁護士は167時間と差が出た(資料:厚生労働省の資料をもとに日経アーキテクチュアが作成)
一級建築士、医師、弁護士の1カ月当たりの労働時間の推移。厚生労働省が毎年実施する賃金構造基本統計調査より抜粋。1カ月の所定内実労働時間と超過実労働時間の合計。12年は一級建築士が183時間なのに対し、医師は174時間、弁護士は167時間と差が出た(資料:厚生労働省の資料をもとに日経アーキテクチュアが作成)

 日経アーキテクチュアの労働実態調査では、1カ月当たり80時間以上の残業時間と答えた回答者は30.4%(図1-13)。ピーク時で見ると45.0%もの人が80時間以上の残業をしている。

図1-13 4~9人の設計事務所で残業時間が最長
4人以上9人以下の設計事務所で長時間、残業している人の割合が高い。上のグラフは2012年における1カ月の平均残業時間、下のグラフはピーク時の1カ月当たりの残業時間を示す(資料:日経アーキテクチュア)
4人以上9人以下の設計事務所で長時間、残業している人の割合が高い。上のグラフは2012年における1カ月の平均残業時間、下のグラフはピーク時の1カ月当たりの残業時間を示す(資料:日経アーキテクチュア)

 こうした現状について、61.7%の回答者が「労働時間が長い」と感じている(図1-14)。加えて、39.4%もの人が、「過去3年間に、過労によって体調を崩したり、体調に不安を感じたりしたことがある」と回答した(図1-15)。

図1-14 6割が労働時間「長い」
労働時間の長さについて聞いた。「長い」と「やや長い」を合わせると、61.7%の人が長時間労働になっていると感じている(資料:日経アーキテクチュア)
労働時間の長さについて聞いた。「長い」と「やや長い」を合わせると、61.7%の人が長時間労働になっていると感じている(資料:日経アーキテクチュア)
図1-15 体調を崩した人は4割
過去3年間に過労によって体調を崩したり、体調に不安を感じたりしたことがあるかを聞いた。4割の人が健康に影響が出ている(資料:日経アーキテクチュア、イラスト:シギハラサトシ)
過去3年間に過労によって体調を崩したり、体調に不安を感じたりしたことがあるかを聞いた。4割の人が健康に影響が出ている(資料:日経アーキテクチュア、イラスト:シギハラサトシ)

 労働時間や仕事量が増えたことについて、ある大手建設会社の設計部長は、「5年前と比べ、確認申請の書類づくりなど設計以外の業務が格段に増えた」と指摘する。

 ほかにも、「消費税増税前の駆け込み需要で、集合住宅や戸建て住宅を中心に設計業務が増えた。しかしリーマン・ショックのころに仕事が減り、所員が減った。それがまだ戻っていない。団塊の世代が定年で減ったことも加わり、物理的に仕事量がこなせないほどになっている」(10人以上49人以下の設計事務所に勤務する40代)といった声もある。

 それでも、やりがいが失われているわけではない。08年の調査と比べて、むしろ仕事に対するやりがいを感じる人は増えた(図1-16)。安倍晋三政権による経済政策「アベノミクス」に期待する声も高い(図1-17)。

図1-16 やりがいを感じる人は9割
2008年調査では「やりがいを感じる」「どちらかといえば感じる」と回答した人の合計が85.1%だったのが、13年調査で91.9%に伸びた(資料:日経アーキテクチュア)
2008年調査では「やりがいを感じる」「どちらかといえば感じる」と回答した人の合計が85.1%だったのが、13年調査で91.9%に伸びた(資料:日経アーキテクチュア)
図1-17 5割超がアベノミクスに期待
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が今後の仕事にどのような影響を与えるかを聞いた。58.0%の人が好影響を与えると回答した(資料:日経アーキテクチュア)
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が今後の仕事にどのような影響を与えるかを聞いた。58.0%の人が好影響を与えると回答した(資料:日経アーキテクチュア)

 別の大手建設会社の設計担当役員は、「アベノミクスには期待するが、すぐに業績に好影響が出るわけではない。労働負荷が高まっている現状を改善して生産性を向上させないと、もし設計案件が増えても給与を増やせるほどの恩恵を得ることはできない」と話す。

 一級建築士の労働環境は決して良くない。一方で、設計者のやる気は高い。景気が好転する可能性があるだけに、好機を逃さないよう、効率化など労働環境を改善しておくことが望まれる。