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「見ただけで分かる模型を」

 アーキネットの松島孝夫プロデューサーは、コーポラティブハウスとしては常識外れともいえるこの提案を「面白い」と思った。外部に開いたテラスの魅力を生かすために建蔽率や容積率の余裕を残した計画とし、12年4月、入居を希望する参加者を募集した〔図1〕。

〔図1〕つくり込んだ模型を要所で提出
参加者募集時に50分の1の模型を用意。生活のイメージが広がる模型で関係者の心をつかんだ(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成、写真:アーキネット)
参加者募集時に50分の1の模型を用意。生活のイメージが広がる模型で関係者の心をつかんだ(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成、写真:アーキネット)

 コーポラティブハウスの計画では参加者を集めて建設組合をつくり、その出資金をもとに土地の購入と建物の建設を行う。必要な数の参加者を集められるかどうかが事業の実現を左右するので、募集時の計画説明が重要になる。ただ、最初の説明はアーキネット側で行うので、設計者は直接プレゼンテーションしない。そこで用意したのが冒頭の模型だ。「全住戸の間取り案と使用例を平面図や断面図、模型で示し、見ただけですぐ計画の自由さを理解できるようにした。模型は暮らしのイメージが広がるよう緻密に表現した」(オンデザインパートナーズの中川エリカ氏)

 募集開始時は各階に1住戸を想定していたので、50~60m2を中心とする10戸のバリエーションを示した。例えば接地階では32m2の広い庭を畑として使い、地上3階では細長い外部空間をドッグランに利用する。屋外の桜が目の前に見える地上4階には、桜に面した屋外テラスを設けた〔図2、3、写真2〕。各戸のキャッチコピーも設計者側で考えた。

〔図2〕外部も自由に計画
募集時の断面スケッチ。2層ごとのラーメン構造と、避難ハッチをエレベーターホールに置く設計により、外壁やテラスを含めて各住戸を自由に計画できるようにした(資料:オンデザインパートナーズ)
募集時の断面スケッチ。2層ごとのラーメン構造と、避難ハッチをエレベーターホールに置く設計により、外壁やテラスを含めて各住戸を自由に計画できるようにした(資料:オンデザインパートナーズ)

〔図3〕暮らし方を例示
「ドッグランつきの家」、「桜ダイニングつきの家」など、プランと家具配置の例を全住戸で示した。通常は共用部となるエレベーターホールなどまでその住戸が専用することも表現(資料:オンデザインパートナーズ)
「ドッグランつきの家」、「桜ダイニングつきの家」など、プランと家具配置の例を全住戸で示した。通常は共用部となるエレベーターホールなどまでその住戸が専用することも表現(資料:オンデザインパートナーズ)

〔写真2〕生活まで表現する
テラスに置いた小物までつくり込み、生活シーンを想起させる。外部の緑道とのつながりもよく分かる(模型写真:鳥村 鋼一)
テラスに置いた小物までつくり込み、生活シーンを想起させる。外部の緑道とのつながりもよく分かる(模型写真:鳥村 鋼一)

 説明を聞きに来た人に、模型は強い印象を与えたようだ。実際に事業への参加を決めた大槻聖志・友希子夫妻は、「コーヒーカップや本まで再現してあり、楽しそうに見えた。どういう生活ができそうかという想像が膨らんだ」と話す。計画に興味を持ったきっかけは立地の良さだったが、細かい模型は生活の夢と事業への参加意欲をかき立てた。

 当初の計画案で1フロアに1住戸としていたのは、1戸当たりの費用を抑える目的があった。しかし、「住戸面積がもっと広ければ参加したい」という声が出てきたため、アーキネットはメゾネット2戸を含む全8戸への変更を決めた。設計者側も素早くメゾネット形式の修正案を提示。参加者は順調に集まり、12年9月に建設組合を結成。土地の取得へとこぎ着けた。