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3つの工事価格が持つ意味

 工事費には定価がない。それゆえ、発注者と受注者の間の力関係や、職人不足などの社会情勢に影響を受けて、常に価格は変動する。

 施工者側の工事価格は、積算部門、営業・施工部門、決済者の3段階でつくられる。それぞれの立場で、判断基準が違うので、最終段階で数字が大きく変わることもある〔図1〕。

〔図1〕工事価格の3段階
一般的な相場を反映した積算部門の見積もりを、営業部門が取引先との関係を踏まえた数字に調整。最後は決済者が経営判断を加えた提示額を決定する(イラスト:ぽむ企画)
一般的な相場を反映した積算部門の見積もりを、営業部門が取引先との関係を踏まえた数字に調整。最後は決済者が経営判断を加えた提示額を決定する(イラスト:ぽむ企画)

 まず積算部門。設計図書をもとに原価を積み上げ、調達部門や施工部門、専門工事会社などとやり取りして、見積価格を出す。この段階での数字は、相場を比較的素直に反映したもの。それに対して営業・施工部門は、取引先との関係を盛り込んだ数字を提示する。プロジェクトの発注者や設計者とのこれまでの付き合い、相手方の経営の実情や意思決定の迅速さなどを踏まえた数字をはじく。

 そして、最終的な提示額を決めるのは決済者だ。建設会社なら、支店長クラスの役職者が担当することが多い。ここで、自社の経営戦略や売り上げ目標を考慮した数字がつくられる。積算は単に数字を積み上げるものという認識でいると、予想とのギャップに驚かされるかもしれない。