PR

前倒しでできるコスト対策

 上昇局面にある工事費を見越して設計できれば、手戻りを防ぐことにもつながる。コストに配慮した設計の基本は「軽く」「浅く」「低く」「狭く」の4ポイント。例えば「浅く」では、地下の湧水ピットを、透水処理層を設けるマットスラブに変更することで、掘削量を減らすことができる。高騰する土工事などの総量を減らせるため、コスト縮減が期待できる。

 上振れしそうな要素については、建設会社や専門工事会社、メーカー各社にあらかじめヒアリングをかけて、受注状況や資材の調達状況などをつかんでおく。早めに関係者を巻き込み、情報を得ることも重要だ。それによって、施工者からの創意工夫を引き出す余地も生まれる。

 施工者が仕事を選べる売り手優位の現状では、施工者のアイデアを早い段階から取り込んで、彼らのモチベーションを引き出すことも大事だ。それによって工事費が削減できれば、発注者の利益にもつながる。

 さらに支払い金についても、着手金の提示や工程途中での分割払いの容認など、契約上の配慮も欠かせない。設計者からは、見積もり要項作成時に発注者に提案することができる。発注者もこうした実務上の助言を求めている。発注者、設計者、施工者がお互いの立場を考慮しながら対等の交渉テーブルに着くことで、プロジェクトを成功に導くことができるだろう〔図3〕。

〔図3〕工事費高騰時代はパートナーシップが重要
工事費が発注者優位で決まっていた時代は、施工者が厳しい金額で受注するケースもあった。工事費高騰が続く今は、誰もが納得できる契約を結んだうえで、良きパートナーとしてプロジェクトに取り組む必要がある(イラスト:ぽむ企画)
工事費が発注者優位で決まっていた時代は、施工者が厳しい金額で受注するケースもあった。工事費高騰が続く今は、誰もが納得できる契約を結んだうえで、良きパートナーとしてプロジェクトに取り組む必要がある(イラスト:ぽむ企画)