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窒息寸前の不動産融資

2008/09/08

 新興デベロッパーが苦境に喘いでいる。短期のローンを借り入れて開発用地を取得したはいいが、 今年になってリファイナンスに窮する例が後を絶たない。物件を処分しようにも、今度は買い手側にローンがつかないので売買が決済できない。身の丈を超えて投資を拡大してきたデベロッパー側の責任も大きいが、多くの経営破綻を招いた直接の原因は、融資をめぐる環境悪化にある。

 過去2年半にわたり一貫して増加してきた邦銀の不動産融資残高は、2008年6月末ついに四半期ベースで減少に転じた。また、新興デベロッパーの資金供給源であるノンリコースローンに至っては、証券化した債権の出口がCMBS(商業用不動産ローン担保証券)市場の縮小で塞がれ、窒息寸前となっている。

 日本証券業協会の月次報告を基に集計してみたところ、2008年に入ってから7月末までに発行されたCMBSは約2000億円だった。年末までに発行される商品を加えても、1年間で2兆3000億円ものCMBSが発行された2007年に比べると劇的な減少になりそうだ。ここにきて、過去に発行されたCMBSの裏付け債権が傷付く事例が現れ、投資家離れが懸念される状況になっている。

 6月26日には、モルガン・スタンレー証券が2007年9月に発行したCMBS、JLOC38(総額約715億円)に組み込まれた30本のローンのうち一つが満期までに返済されなかったことが判明。フィッチレーティングスは、JLOC38の5つのトランシェのうちクラスD社債(48億5000万円、同社格付けBBB)のみ、格下げ方向で見直すことを発表した。CMBSの裏付け資産としては国内で初めて明らかになったデフォルト事例といわれる。

 本誌の取材によると、問題になった物件は原宿・竹下通りに面したT・Hビル跡の土地、260m2とみられる。ヒューネットが2006年9月に約40億円で取得後、SPCに移管して開発を計画していた物件だが、記事執筆時点では更地のままとなっている。債権額は35億円だ。

 CMBSの裏付け資産は安定した賃貸収益を生むビル向けのローンが中心だが、利回りを稼ぐため、時としてリスクの高い開発プロジェクトを対象にしたローンを混ぜることがある。しかし今や不振デベロッパーが放出した土地が市場にあふれており、なかでも小規模の開発用地は売るに売れない状況だから、担保回収の見通しは明るくない。米サブプライムローン問題の波及を見越して、手持ちのノンリコースローン債権の処分を急いだといわれるオリジネーターに問題はなかったか。いずれにしても、証券化商品の流動性低下が融資の停滞を招き、融資の停滞が現物不動産の流動性を奪う、悪循環の一端がこの事例から垣間見える。

 既に発行されているCMBSのなかには経営破綻したデベロッパー関連の債権を組み入れたものもある。スタンダード&プアーズは、同社が格付けを担当したCMBSのなかにゼファー関連が2本、アーバンコーポレイション関連が6本あることを明らかにしている。フィッチレーティングスによると、レイコフ関連会社向けのローンを含むCMBSもあるようだ。本来、ノンリコースローンやCMBSの価値は物件担保の回収可能性いかんにかかわっており、アセットマネジャーやデベロッパーの信用力とは無関係だったはずだが、ここまで土地が売れなくなるとその建前も通用しなくなってくる。

 外資系投資銀行のノンリコースローン担当部門で大規模なリストラが実行されたこともあり、融資環境が再び上向くには長い時間がかかるだろう。ただし、前向きに考えれば、より正確な格付けの基礎となるデフォルト実績の統計が国内に蓄積されるという意味で、長期的には市場形成にプラスに働くかもしれない。

本間 純日経不動産マーケット情報

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