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H&Mの銀座デビューを考える

2008/10/31

 日経不動産マーケット情報11月号では、銀座エリアの不動産投資の動向を特集している。市況の悪化によって暗い話題が多いなか、銀座における明るい話題の一つはスウェーデンのカジュアル衣料専門店、H&Mの出店だ。9月13日、中央通り沿いのGINZA gCUBEに日本第1号店を開店した。オープン後も入店待ちの行列が絶えない状態だ。

 銀座の中央通りに面する店舗の賃料は、日本一高額だと言われる。H&Mは、高い賃料に見合うだけの効果を得られているのだろうか。興味を持って調べてみた。銀座エリアの市況に詳しい不動産仲介会社によると、中央通りに面する路面店の店舗賃料は10月時点で1坪あたり共益費込み20万円が目安だ。H&Mの売り場面積は地下1階~地上3階の約1000m2(約300坪)なので、仮にすべての階の賃料が20万円だとすると、年間の賃料総額は20万円×300坪×12カ月=約7億円となる。

 一方、船井総合研究所の推計によると、H&Mの広告効果はオープン翌日までで約30億~50億円に上る。内訳は出店効果が約10億円、開店前後のマスコミ露出が約20億円、口コミやブログ効果が数億円だ。出店によるPR効果だけで、年間の賃料負担額を上回ったと見ることができる。同研究所の岩崎剛幸シニアコンサルタントは「高級ブランドが立ち並び日本人がステイタスを感じる銀座に、安くてオシャレなカジュアルブランドの1号店が出店するというギャップに対して人々が関心を寄せ、大きな広告効果を生み出した」と話す。この広告効果は、H&Mの2号店が原宿に完成し、渋谷の3号店ができる2009年以降に倍増し、約100億円に達する見込みだという。

 ちなみに、昨年度、銀座・有楽町エリアにオープンした丸の内オアゾなど4施設の開店前後のテレビ露出の合計広告費換算額は、日本モニター調べによると約62億円だった。この数字と比較すると、H&Mが一つのブランドで生み出した広告効果はかなり良い成績だと言える。

 H&Mと同じカジュアル分野のアパレルブランドであるGAP(1995年、銀座数寄屋橋阪急に1号店出店)やZARA(1998年、渋谷に1号店出店)は出店当時、H&Mほど話題にならなかった。これは、H&Mが欧州ブランドとして日本人の期待を集めたことや、アパレル業界が低迷し始めた時期の出店だったために明るいニュースとして話題になったからだろう。
 
 ところで、筆者は海外旅行中にH&Mで何度か買い物をしたことがあった。「海外のユニクロ」と称されるカジュアルブランドが銀座で話題になるのか、と開店までは冷めた目で見ていた。しかし、連日続くH&Mのニュースを見ているうちに、やはり行かずにはいられなくなり、一度足を運んだ。すると、電車を降りてから店舗にたどり着くまでに、H&Mのショップバックを持った若い女性を立て続けに見かけた。このショップバックが人の目に付くことや、オープン日にH&Mのロゴ入りの傘やミネラルウォーターを配布したことも大きな広告効果になったようだ。

 近年、銀座では高級ブランドの旗艦店開店に加え、H&Mやディーゼルなどのカジュアルブランドの開店も目立つ。今後、ブランドの地位確立には、顧客層や商品の値段設定を問わず、「銀座デビュー」が一つのキーワードになるのかもしれない。これから銀座デビューが決まっている、カジュアルブランドのアバクロンビー・アンド・フィッチ(2009年、日本1号店出店予定)やルイ・ヴィトン(2010年、世界最大旗艦店出店予定)の広告効果にも注目してみたい。

伊藤 恵梨日経不動産マーケット情報

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