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市況が悪化したいまだからこそ、テナント満足度が重要に

2009/02/16

 賃貸オフィスビルの空室率の上昇が続いている。三鬼商事によると、東京都心5区にある基準階面積100坪以上のオフィス空室率は2009年1月末時点で4.9%となり、12カ月連続の上昇となった。DTZデベンハム・タイ・レオンの調査では東京都心部の大規模ビルの空室率が、2008年第4四半期に5.19%となった。同社の調査で空室率が5%を超えたのは約4年ぶりのことだ。

 前回、オフィス市況が急変した2002年~2003年ころは、オフィス床の大量供給が原因で需給バランスが崩れ、空室が増加した。ただ、外資系金融機関を中心とした企業のオフィス需要は底堅かった。借り控えしていた企業の移転需要も顕在化したことで、空室率は比較的、早く下落に転じた。

 いまは世界的な景気後退でオフィス需要そのものが激減している。旺盛なオフィス需要を持つ業種や企業は見当たらない。景気の先行きが不透明ななか、空室率が下落に転じるまでにはしばらく時間がかかりそうだ。日経不動産マーケット情報が賃貸オフィス市況を5人の市場関係者に予測してもらった結果をみると、市況が回復するのは早くとも2010年以降になるとの見方が多かった。なかには、2012年までかかるという見方も出ている。

 いまこそ、あらためてビル経営の原点に戻って、テナント満足度を追求する試みを続けるしかない。本誌が取材した市場場関係者からも、これから「“大家と店子”の信頼関係が改めて重要になる」との指摘が出ている。取材などを通じて、テナント満足度を追求し、快適なオフィス空間・環境を実現するために努力を惜しまない人に出会ってきた。大手デベロッパーの社員か、個人オーナーであるかにかかわらず、本当にオフィスビル運営が好きなのだなと思わせる人たちだった。その一方で、不動産やオフィスビルを好きなのではなく、不動産やビルを“金もうけのツール”として好きなのだなと思わざるを得ない人もいた。

 オフィスビルを金もうけのツールとしてとらえることが、必ずしも悪いわけではない。大切なのは、「テナントを満足させることが、ビルの収益を最大化する近道となる」ことを理解しているかどうかだ。不動産投資市場が拡大するにつれて、「ファンドが所有するオフィスビルには入居したくない」という企業が出てきたのも事実だ。急激な賃料値上げを進めたり、コスト削減の名のもとにビル管理の質が低下したりすることで、テナントの信頼を損なったビルもある。「テナント満足度」という言葉には、もはや手あかがついているように思えるかもしれないが、投資市場が回復に向かう過程において、あらためてその重要性が高まっている。

徳永 太郎日経不動産マーケット情報

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