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エンジニアリング・レポートの責任をどこまで問えるか

2009/03/13

 ファンドはマネジメント会社の責任を、マネジメント会社はエンジニアリング・レポート作成者の責任を、安易に追及などしてほしくないのだ――。社団法人建築・設備維持保全推進協会(BELCA)のウェブサイトで、エンジニアリング・レポート(ER)やデュー・デリジェンスの責任のあり方について、不動産投資市場の関係者に問いかけた文章が掲載されている。

 執筆したのは、BELCAのエンジニアリング・レポート作成者連絡会議の町山公孝幹事長だ。先日、東急リアル・エステート投資法人の運用会社が投資法人に約2075万円を支払ったことが、文章を執筆するきっかけとなっている。運用資産として取得した物件のリニューアル工事費用が当初の査定を大幅に上回ったことから、運用会社が超過分の約2075万円の支払いを決めたケースだ。町山氏は、東急リアル・エステート投資法人と運用会社の対応について「透明性を感じて感動した」と評価する一方で、ER作成者に対しては、「間違えましたでは困るのだ」と改めてくぎを刺した。

 この文章を執筆した背景には、ERの責任をどこまで問えるかという問題意識がある。「今回のケースが、『特殊解』であることを認識しないまま、『そうか、あとで間違いが見つかったらデュー・デリジェンス(あるいは運用会社)の責任にできるのか』との誤解がまかりとおり、一般化することになってしまったら、これはたまったものではない、と思ったのも事実」と書かれている。

 調査会社のイー・アール・エスが、ERを取り巻く環境変化をまとめたものを自社のウェブサイトに掲載していた。これをみると、大地震やアスベスト問題、不動産投資市場の拡大といった様々な社会的事件や動向を経験して、ERも徐々にその精度を高めていったことがわかる。最新の知見を持って、かつてのERを眺めてみると物足りない部分や、その内容の精度に不満を感じるものもあるだろう。だが、それには致し方ない面もある。

 ERに不備があったとしても、それがかつての知見や経験で最善を尽くしたものなのか、それとも明らかな過失によるものかをきっちり分けて考えなければならない。町山氏が指摘するように、ERやデュー・デリジェンスの責任にしてしまえばいいとの誤解が広まれば、うかつにER作成に手を出せなくなってしまう。

 町山氏の文章はBELCAのウェブサイト「エンジニアリング・レポート」のところに掲載されており、だれでも読むことができる。ERをめぐる責任のあり方を考えるうえで、不動産実務に携わる関係者は目を通してみてはいかがだろうか。

徳永 太郎日経不動産マーケット情報

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