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【MIPIM特派報告】独DEGI「日本にアジア投資の足場を築く」

2009/04/02

 DEGIは、2008年9月に日本に参入したドイツのファンド運用会社だ。心斎橋のランドマークとなっているZARA旗艦店ビルの取得で、国内の不動産関係者にもその名を知られるようになった。カンヌのヨットハーバーに係留されたクルーザー上で、同物件の取得を担当したMalcolm Morgan氏と、親会社Aberdeen Property InvestorsのCEO、Rickard Backlund氏に話を聞いた。

 DEGIが取得したのは心斎橋交差点にほど近いLa Porte Shinsaibashi(ラ・ポルト心斎橋)だ。価格は9000万ユーロ、当時のレートで約144億円だった。黒川紀章氏の設計で知られた旧ソニータワー跡地に開発された店舗ビルで、地下1階から地上3階にスペインのカジュアルブランド、ZARAの旗艦店が入居している。フランクフルトのDEGIでマネージング・ディレクターを務めるMorgan氏は「奇跡的な出会いだった。見た瞬間にほれ込んだ」と振り返る。

10年間の定期借家が決め手


La Porte Shinsaibashi

 DEGI(Deutsche Gesellschaft fur Immobilienfonds)は1972年設立の大手ファンド運用会社で、ドイツ国内で四つのオープンエンド・ファンドなどを運用している。2008年3月にはAberdeen Property Investorsの傘下に入っている。2008年には17億ユーロ(約2200億円)を投資した。

 同社はこれまでドイツ国内を中心に欧州での投資を手がけてきたが、「今後は欧州以外への投資比率を40%に高めたい。約2年前からアジアへの投資を模索し各地を旅してきたが、最終的には日本を第一の投資先に絞り込んだ。まず日本で確固とした足場を築きたい」とMorgan氏は語る。直近では金融危機の影響を受けている日本だが、キャッシュフローの安定性を重視するコア投資の対象としては、市場の成熟度からみて最適との考えだ。

 Morgan氏はラ・ポルト心斎橋の取得までに、東京や大阪で10物件以上を視察した。「最初は東京の物件を見て回ったが、最初の投資としては金額が大きすぎる。キャップレートも3%台ではなく、4.5%は欲しいところだ。丸の内のビルを買うのは我々の役目じゃないと感じた」。テナントとの入居契約期間が2年間と、欧米と比べて短い場合が多いのも、賃料の変動を嫌う長期投資家にとっては頭が痛い問題だった。その折、同氏は大阪で米AIGが店舗ビルを売りに出していると耳にし、現地に向かった。

 ラ・ポルト心斎橋はブランドショップが立ち並ぶ心斎橋交差点に位置し、地下鉄駅の出入り口に直結。夜間になると建物全体が光り輝き、遠くからでもよく目立つ。加えて、ZARAとビルオーナーの間で結んだ10年間の定期借家契約が取得の決め手となったという。「飛び抜けた立地と視認性、グローバルなブランド、安定した賃料。何年待っても出会えないような物件だ」(Morgan氏)。周辺の高級ブティックと異なり、テナントのZARAがカジュアルブランドであることも、不況下では強みになると考えている。

「2008年は良い年だった」



Rickard Backlund氏(写真:Aberdeen Property Investors)
 DEGIの親会社、Aberdeen Property InvestorsのCEOであるRickard Backlund氏も、「経済が成熟し、制度の信頼性が高い日本市場がアジアで最も重要」と考えている。

 同社の主な投資先はヨーロッパ大陸と英国、北欧で、アジア投資の比率は2%程度。以前からファンド・オブ・ファンズを通じて間接的に日本の不動産に投資してきたが、直接、物件を取得するのはラ・ポルト心斎橋が初めてとなる。

同物件を組み入れたDEGI Internationalの利回りは、2008年通期で約4.8%。リーマン・ショック後の10月、機関投資家による大量の資金引き出しにあって換金停止措置をとったものの、その後3カ月で新たに6500万ユーロ(約85億円)の資金を集め、通常の運用に戻った。「利回りはライバルを上回り、我々にとっては良い年だった」とBacklund氏は振り返る。

 Aberdeen Property Investorsは英大手ファンド運用会社、Aberdeen Asset Managementの不動産投資部門。ストックホルムを拠点に世界で280億ユーロ(約3兆7000円)相当を運用している。運用スタイルはコア~バリューアデッドで、オポチュニティ・ファンドは持っていない。年金基金や、退職者などの個人投資家の資金を運用している同社のポリシーは“安全第一”だ。

 傘下のファンドはいずれも物件の値上がり益(キャピタル・ゲイン)を追わず、賃貸収益を目的とするタイプで、物件保有期間は平均7~10年。多くの物件はポートフォリオの組み替え時に売却するが、場合によっては一つの物件を20年以上保有することもある。「ハイリスク・ハイリターンの投資は米投資銀行に任せればいい。最も避けたいのはボラティリティ(変動)。山が高ければ谷もきつい。」とBacklund氏は話す。

 投資額について特段の目標を持たず、目標とする利回りを狙える物件が出てきたときだけ買いに入る、“リターン・ドリブン”戦略をとっている。もう一つの特徴が「競争が激しいマーケットに入らない」こと。例えば北米大陸では、米国内での投資を手控える一方で、より市場の小さなカナダに投資してきた。日本についても、プレーヤーが減りつつある今後が同社の出番と見ている。

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