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不動産投資ビジネスの新潮流(3)常識は変わる

2012/01/23

不動産金融を取り巻く環境が大きく変化するなかで、どのように市場を読み、戦略を練って、利益につなげていけばよいか――。日経不動産マーケット情報はこのほど「基礎から学ぶ不動産投資ビジネス 第3版」(田辺信之著)を発刊した。不動産投資に必要な基本的ノウハウを、実務に即して解説している。全面改訂した書籍のなかから、内容の一部を紹介する。

 時代の流れというのは、いつの間にか私たちがそれまで正しいと信じていた常識を覆してしまいます。不動産市場に関しても同じことがいえます。

 1990年代にバブルが崩壊するまでは、多くの人々が「土地は価格が上昇し続ける特別な資産である」という「土地神話」を信じていました。だからこそ、皆が借金をしてでも、急いで土地を買おうとしました。それが今では、「土地神話」を信じる人は誰もいなくなりました。むしろ、地価下落が20年間近く続いている地方も多いので、そこで生まれ育った成人前の人にとっては、「土地は毎年価格が下がり続ける特別な資産である」という認識が生まれてもおかしくはありません。

 同様にバブル崩壊までは、土地そのものに稀少価値を見いだしていたため、既に収益を上げているテナント付きの賃貸住宅よりも、更地に投資する方が好まれました。建物付きの土地を購入するときには、更地価格から建物解体費用やテナント退去費用などを控除して不動産価格を算出することもよくありました。更地の方が、価格も高く評価されたのです。その頃はよく、「不動産は更地に限る」といったプロ同士の会話も聞かれたものでした。ところが、投資目的次第ではありますが、今では既に収益を上げている稼働物件の方が、更地よりも高い評価を受けることが多くなりました。

 1990年代後半になってからは、企業が不動産を売却することについての認識が大きく変化しました。それまでは企業が不動産を売却するのは「業績が悪化したので、事業の立て直しのためにやむを得ず手放す」という印象が強いものでした。ましてや、企業が本社を売却すると、「あの会社はいよいよ切羽詰まってきたのかもしれない」などと噂される恐れすらありました。ところが、90年代後半から2000年代前半、各企業がバブル時代に膨れ上がった借入金を返済するために、不動産や株式を売却して企業体質のスリム化を図るようになってから、状況が一変しました。「すぐに利用しない不動産をそのまま抱えておくことは、経営陣の怠慢だ」とまで言われるようになったのです。本社ビルの売却なども「いよいよ本格的なリストラに踏み切ったようだ。これから先は期待できる」、「なかなかやり手の経営者だ」などと前向きに評価される場合も増えてきました。

 2000年前後から大きな変化を見せたのは、不動産投資市場のグローバル化です。それまでは、「不動産業はローカルな(現地密着型の)産業だ」と言われていました。不動産はその名の通り「動かない資産」であって、一般の商品のように輸出や輸入をすることができませんし、不動産の所在する場所にいる人が、その地域事情に最も精通し、的確な投資判断や様々な交渉ができるからです。たまに海外から日本に、あるいは日本から海外に投資することがあっても、それはあくまで個別取引であって、市場の潮流をつくるものではありませんでした。

 ところが不動産証券化の普及が、この常識を打ち破りました。不動産の所在する地域に精通した人材が、投資に適した不動産を取得して証券化し、その証券を投資家に売るようになったからです。証券化する過程で、グローバルスタンダードに適合するようなデューデリジェンス(不動産の詳細な調査)が実施されますし、必要に応じて証券には格付け(格付け機関が証券の信用力を評価するもの)も付与されます。不動産証券化の普及が不動産投資の「標準化」をもたらしたことによって、不動産投資のグローバル化が飛躍的に進展したのです。もちろん今でも、不動産業が本質的にはローカルな産業であることには変わりありません。ただ、それまではまったく相反するものと考えられていた「ローカル」と「グローバル」が証券化を通じて並立するようになったのです。

基礎から学ぶ不動産投資ビジネス 第3版

基礎から学ぶ不動産投資ビジネス 第3版

定価:2,100円(税込)
田辺信之 著/日経不動産マーケット情報 編
A5判、264頁
2011年12月19日発行

本書を読むと、こんな疑問に対する答えが見つかります・・・・・
・NOIとは何か、どのように計算すればよいのか
・キャップレートの目安は何パーセントか
・DCF法とは何か
・NPVとIRRはどのように使い分けたらよいか
・イールドスプレッド、リスクプレミアムとは何か
・SPEやSPCの役割は
・なぜケイマン諸島にSPCをつくるのか


――第4回に続く――

日経不動産マーケット情報

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