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ホールの音響設計は豊田泰久が担う

 このフロアには、コンサートホールのエントランスだけでなく、ホテルのロビー、ショップ、バー、コンサートのチケット交換レセプションなどを設けていた。パブリックエリアで、一般の人も無料で入場が可能なエリアだ。南側と北側には、市街地を眺望できるパノラマウインドーがあり、誰でも風景を楽しめるようになっている。

 北ドイツ放送エルプフィルハーモニー管弦楽団の拠点となるグランドコンサートホールの客席数は2100。ステージの周りを360度取り囲むように客席を配したワインヤード型のホールだ。地上高51mの位置にある17階から同68mの位置にある21階までを占めるホールは、サッカースタジアムのような高低差のある座席配列となっている。

客席が360度にわたってステージを取り囲むワインヤード型のホールを備える(写真:武藤 聖一)
客席が360度にわたってステージを取り囲むワインヤード型のホールを備える(写真:武藤 聖一)
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 オーケストラの指揮者から客席までの距離は最長で30mなので、その臨場感は申し分ない。エントランスを12カ所に設けていて、各ホワイエにはバーカウンターが設置されている。他のコンサートホールでは見られないようなスペースの余裕を感じられる。

 このコンサートホールで特筆すべき点は、永田音響設計の豊田泰久氏が音響設計を手掛けたことだ。豊田氏は、ジャン・ヌーベル氏が建築設計を担当して2009年に竣工したデンマーク国営放送のコンサートホールの音響設計も手掛けている。

 豊田氏は、エルプフィルハーモニーのコンサートホールの音響設計で注力した点を、次のようにコメントしている。「聴衆がお互いを身近に感じられること、一言でいえば距離感を重視した」。

 ホールでは、柔らかい音を実現するために、壁面に凹凸形状をつくり出した。特殊繊維入り強化石こうボードを、多層に張り合わせ、これを表面から削り出して凹凸を実現している。音の散乱効果を生かす設計だ。席の違いによる聞こえ方の違いも減らす効果があるという。

特殊繊維入りの強化石こうボードを多層に張り合わせた材料を削って、表面に凹凸を生み出す。この凹凸によって音が散乱する。音が柔らかくなるとともに、席による音の違いを抑えられる(写真:武藤 聖一)
特殊繊維入りの強化石こうボードを多層に張り合わせた材料を削って、表面に凹凸を生み出す。この凹凸によって音が散乱する。音が柔らかくなるとともに、席による音の違いを抑えられる(写真:武藤 聖一)
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 このホールでの17年内のコンサートプログラムは既に決まっている、シカゴ交響楽団やウィーンフィルハーモニーといった著名な管弦楽団だけでなく、2度目のグラミー賞を2月12日に受賞したピアニストの内田光子氏の演奏も予定されている。

 10年以上前の06年にスタートした本連載は、途中、少し休載期間があったものの、ついに200回の節目を迎えることができた。これまでご愛読いただいたことに、改めて感謝の意を表したい。次は300回の節目を目指して頑張っていこうと思う。本記事の最終ページには、これまでの連載を振り返って、読者の方にもう1度見ていただきたい建物を紹介している。併せてご覧いただきたい。