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工法変更して地下深くに新駅を構築

 AECOM-Arup JVは、1960年代に計画されたプロジェクトのコンセプトをレビューし、北はブロンクス、南はブルックリンまでの延伸も含め、検討し直した。元々は地上からオープンカット方式で地下鉄を掘る計画だったが、最終決定では、全断面トンネル掘進機(TBM、トンネル・ボーリング・マシーン)で岩盤の深いところに新駅を設ける方針を採ることになった。そうすれば、オープンカットによって工事中に地上の道路が使えなくなる範囲が少なくなり、社会経済的にもコミュニティーにとっても影響を減らすことができる。

フェーズ1の断面。トンネルの深さは地下13.7m~25.9m。岩盤は硬く、34.5MPa~82.7MPa(良質のコンクリートで約50MPa)だ(資料:©Martin Hall)
フェーズ1の断面。トンネルの深さは地下13.7m~25.9m。岩盤は硬く、34.5MPa~82.7MPa(良質のコンクリートで約50MPa)だ(資料:©Martin Hall)
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 設計契約の時期は、ニューヨーク市にとって非常に重要な時期と重なった。2001年に発生した9・11同時多発テロだ。あまりにも先行きが不透明な時期であり、プロジェクト全体分に対する連邦の資金調達が困難になった。この結果、工区ごとにフェーズ分けしてプロジェクトを進めることになったのだ。

 まずは実行可能性の高い、アッパー・イーストサイドをフェーズ1とし、既存の地下鉄Q路線の延長とした。

フェーズ1の工事で、44万6000m3の岩盤と、35万1000m3の土砂を掘削した(写真:©Floto + Warner_OTTO)
フェーズ1の工事で、44万6000m3の岩盤と、35万1000m3の土砂を掘削した(写真:©Floto + Warner_OTTO)
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 フェーズ1は約3kmの区間ではあったが、既存駅の改修、新たに岩盤を掘削してつくる新駅、1970年代から放置されていたトンネルの修繕、新たなトンネルの掘削、システム開発など様々な業務があり、施工契約は10件に分割された。これはより多くの施工者が参加できるようにということと、競争原理を働かせて様々なアプローチをプロジェクトに導入し、連邦からの、一部区間への資金調達のための要求を満足させるためでもあった。

駅間をつなぐ走行路は2本の、直径約6mのトンネル。主に、TBMを利用して掘削した。駅や一部トンネルはドリルや爆破で掘削した(写真:©DMJM_Harris+Arup _DHA)
駅間をつなぐ走行路は2本の、直径約6mのトンネル。主に、TBMを利用して掘削した。駅や一部トンネルはドリルや爆破で掘削した(写真:©DMJM_Harris+Arup _DHA)
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地上工事は環境配慮を徹底

 地下工事は、爆破時の振動については規制があったものの、24時間無休工事だった。一方、地下鉄入り口、その周辺整備、TBMや資材を地下坑内に降ろすたて坑など、地上の工事に関しては、日中のみ、1週間のうち6日に制限された。施工契約には、地上の工事中でも車道を4車線、歩道は最低でも幅2.1m確保し、工事中の周辺地域の空気質、安全対策、環境対策を行うことなどが盛り込まれた。

地上工事は近隣への影響を極力少なくする形で行われた(写真:©DMJM_Harris+Arup _DHA)
地上工事は近隣への影響を極力少なくする形で行われた(写真:©DMJM_Harris+Arup _DHA)
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