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準防火地域に建つ

 「下馬の集合住宅」の敷地は、近隣商業地域で準防火地域である。1階は2時間耐火、2階以上は1時間耐火が求められる。そこで、1階はテナントでRC造とし、2~4階を集合住宅で耐火木造とすることにした。

 内海氏は、設計の基本的な考え方について「敷地が狭小で変形していることの制約が大きかった」と語る。敷地の北側は交通量の多い駒沢通りに面し、東側は区道に接する「くの字」型だった。建物のボリュームを確保しつつ、階段やエレベーターをうまく配置する工夫が必要になった。

 たどり着いたプランは、「エレベーターを建物の中央に置き、階段は建物の外周を彫り込むようにつくった」(内海氏)。各階1住戸とし、それぞれ階段を上がっていくと玄関があり、また一段上がると上の階の玄関があるという立体的な長屋だ。らせん状に彫り込んだ外階段の途中には、住まい手同士が交流できるテラスも設けた。

 床は、スギとベイマツの集成材を繊維方向で直行させて2枚重ねた「マッシブホルツスラブ」と呼ぶ材料を採用した。厚さは240mm。この床材が梁の役割も併せ持つ。柱はベイマツ集成材、斜材はベイマツの製材だ。エレベーターまわりにはOSBの厚板を耐震壁として使っている。

1階はRC造でテナント、2〜5階は木造で各階に1住戸の集合住宅。5階を除き、各住戸はエレベーター側と、外周をらせん状に彫り込んだ階段側の2つの玄関を持つ(資料:KUS)
1階はRC造でテナント、2〜5階は木造で各階に1住戸の集合住宅。5階を除き、各住戸はエレベーター側と、外周をらせん状に彫り込んだ階段側の2つの玄関を持つ(資料:KUS)
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「下馬の集合住宅」で採用した木の部材(資料:KUS)
「下馬の集合住宅」で採用した木の部材(資料:KUS)
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 耐火の主な方法には、構造の木部を石こうボードなどで耐火被覆する「被覆型」、燃え代を外周に取る「燃え止まり型」、鉄骨を木で囲う「鉄骨内蔵型」の3種がある。「下馬の集合住宅」は、このうち被覆型を採用した。

 柱と床の鉛直荷重を支持する構造部分はすべて耐火被覆をしている。柱は厚さ15mmの石こうボードの2枚貼りと、発泡黒鉛シートという火にあぶられると膨らむ耐火シートの組み合わせで認定を取った。床については、下側は厚さ15mmと21mmの強化石こうボードの2枚貼りに、上側には石こう系のセルフレベリング材50mmを流して耐火被覆としている。その上にさらに乾式の二重床をつくっており、配管や排気のスペースとするとともに、遮音の効果を見込んだ。

 1階部分から2階の床まではRC造だ。2階の柱から上は木造とし、床・屋根・柱に関しては耐火被覆をして、火災から守る。それに対して、地震力の水平方向の力に抵抗する斜材は鉛直荷重を支持する構造とは明確に区別をして、木をあらわしとし、室内に見えるように使っている。

耐火性能を確保する3つの主な構造方式(資料:KUS)
耐火性能を確保する3つの主な構造方式(資料:KUS)
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床と柱の取り合いの断面図(資料:KUS)
床と柱の取り合いの断面図(資料:KUS)
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「下馬の集合住宅」の断面図(資料:KUS)
「下馬の集合住宅」の断面図(資料:KUS)
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