戦後、日常生活を取り巻く多くのモノや道具が木材から金属や石油化学製品に置き換わっていくなか、日本の木材需要を支えてきたのは住宅だった。その結果、木材を生産・加工する山や製材の現場は住宅での利用を前提にシステムが整備されていった。近年、住宅以外の用途の建築物でも木質材料の使用実績が広がるなか、木の使われ方は川下側から変わりつつある。川上の生産現場はこの変化に対応できるのか。森はどのような課題を抱えているのか。住宅と木材利用に関する調査・研究に携わる原田浩司氏が、山と森、木材調達の最新事情を解説する。
私に与えられたテーマは、「山と木材調達の最新事情」についてだ。
木造というと、日本における従来からの木造住宅や寺社仏閣のイメージが強いと思うが、最近は、木材の使われ方、木材が使われる用途が多様になっている。都会のオフィスでも木材が使われるようになっているし、ビルの谷間にも木材が使われて、くつろぎの空間になっているのもよく見かける。個人的にも最近は変わってきたなと感じている。
最初に山から街まで、どういう経路をたどって木材がやってくるのかをまとめてみたい。
まず樹木をチェーンソーで切るというところからスタートする。切った丸太は、高性能の機械を使って枝や葉っぱを取る。そして運びやすい長さに切って、ダンプで木材市場に運ぶ。かなり大きな製材所だと木材市場を介さず、木材が直に運ばれることもある。運ばれた丸太は、径や長さ、曲り具合を見ながら選別する。そして、丸太を四角にする製材という作業に入る。

ただし、木材はたくさんの水を含んでいるので、乾燥させる必要がある。やっかいなのは木材が乾く過程で、縮んだり、そったり、曲がったり、割れたりする。将来建物に使われてからそうなると具合が悪い。そこで建物に使われる前に、きちんと乾燥させてやる。ここが木材を供給する側のエチケットであり、木材を使ううえで乾燥は大きなポイントになる。
乾かした木材は現場ですぐに使えるように加工を施す。そして現場に木材が運び込まれることになる。