繁華な都会でも、木造の建物はつくれるし、内外装にも幅広く使える―。木材利用の普及と啓蒙を目指し、“木の殿堂”として建てられたのが、大阪木材仲買会館だ。築50年超の老朽化した鉄筋コンクリート(RC)造の旧建物を、木造に建て替えた。海が近いため、万が一の浸水被害を配慮して1階はRC造としたが、2階と3階は太い柱と梁で組んだ木造だ。この柱梁は、設計・施工を手掛けた竹中工務店が開発した「燃エンウッド」という部材。燃エンウッドを使って完成したオフィスビルの第一号物件だ。
燃エンウッドは普通の木材と違い、断面が3層構造になっている。内側の芯にカラマツ集成材、その周りをモルタルで巻き、さらに外側にカラマツ集成材を巻いた構成だ。1時間の火災に耐える「耐火集成材」として、国土交通大臣認定を取得している。今回の敷地は、都心部に多い「防火地域」なので、普通の木造をつくるのは難しい。認定を取得した部材を使うことで木造が可能になった。
この建物のもう一つの特長は、外部にも木材を使った点だ。木材を雨から守り、簡単にメンテナンスできるように、深い軒を兼ねたバルコニーを各階に設けている。繁華な街中に現れた木の建物に、道行く人の多くが珍しそうに見上げていくという。
DATA
- 所在地:大阪市西区
- 事業主:大阪木材仲買協同組合
- 主用途:事務所
- 構造:木造・鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造
- 階数:地上3階
- 延べ面積:1032m2
- 設計者・施工者:竹中工務店
- 完成:2013年3月
- 主な使用木材
- [内装・家具]床:ナラ、壁:ヒノキ・カラマツ、天井:ヒノキ
- [外装]建具・軒:ヒノキ
- [構造]柱・梁:カラマツ耐火集成材
企業に広がる 都市の木づかい
- 定価:本体2,200円+税
- 国土緑化推進機構/日本プロジェクト産業協議会(JAPIC) 監修
- 日経アーキテクチュア 企画
- A4判、104ページ
- ISBN:978-4-8222-0044-2
- 商品番号:239910
- 発行日:2015年4月13日