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戸建て住宅の基準適合率は?

 国土交通省が2015年度における省エネ基準の適合率を公表している。戸建て住宅を見ると、適合率は全体で53%だった。ただ、年間着工戸数4戸以下の事業者、つまり地域密着型の工務店や設計事務所に絞り込むと39%に減る。

 一方、年間150戸以上の建て売り戸建て住宅を供給する事業者(住宅トップランナー)は88%と高かった。小規模な事業者と大手との差が大きく開いている。

2015年度に着工した戸建て住宅における事業者規模別の基準適合率(省エネ基準・誘導基準)(資料:国土交通省)
2015年度に着工した戸建て住宅における事業者規模別の基準適合率(省エネ基準・誘導基準)(資料:国土交通省)
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 もう少し詳しく見てみよう。年間着工戸数4戸以下の事業者は、一次エネルギー消費量基準の適合率は61%で、全体の64%と比べても遜色がない。しかし、外皮基準の適合率は44%と、全体の58%に比べてかなり見劣りする。

 建物の外皮性能はそれほど高めることなく、高効率な設備機器を採用して適合基準をクリアする“メカメカ省エネ住宅”をつくっている実態がうかがえる。工務店や設計事務所にとって、外皮性能の強化が課題といえる。

 外皮性能は、「外皮平均熱貫流率『UA(ユーエー)』」と「平均日射熱取得率『ηA(イータエー)』」で評価する。UA値は建物の断熱性能を示す指標で、数値が小さいほど断熱性が高い。他方、ηA値は建物が日射熱をどの程度取得するかを表し、値が大きいほど日射熱を取り込みやすい。

 UA値とηA値にはそれぞれ、一定の性能をクリアしているか否かを判断する基準値があり、その値は「省エネルギー基準地域区分」に応じて定められている。地域区分は寒暖に応じて8つに分かれ、1~4地域は寒冷地、8地域は蒸暑地、5~7地域はその他の地域となる。

断熱性能を表す外皮平均熱貫流率(UA)は、蒸暑地の8地域を除く1~7地域ごとに基準値がある。平均日射熱取得率(ηA)は、寒冷な1~4地域以外は冷房効果に関係する冷房期の基準値がある。ZEH支援事業において、1、2地域は寒冷地特別強化外皮仕様(UA値0.2以下)の基準も設定している(資料:日経BP総研 社会インフラ研究所)
断熱性能を表す外皮平均熱貫流率(UA)は、蒸暑地の8地域を除く1~7地域ごとに基準値がある。平均日射熱取得率(ηA)は、寒冷な1~4地域以外は冷房効果に関係する冷房期の基準値がある。ZEH支援事業において、1、2地域は寒冷地特別強化外皮仕様(UA値0.2以下)の基準も設定している(資料:日経BP総研 社会インフラ研究所)
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 UAの基準値は省エネ基準に加えて、近年ではさらに高い性能を目指す基準も登場している。

 例えば「HEAT(ヒート)20」は、研究機関や建設・建材会社などで構成する「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」がまとめた基準だ。「G1」「G2」という2レベルの基準値を設定している。

 経済産業省のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業、いわゆるZEH(ゼッチ)支援事業の要件である「強化外皮基準」は、国土交通省の地域型住宅グリーン化事業で「高度省エネ型(ゼロ・エネルギー住宅)」の基準と同等。ZEH支援事業の加点基準は、グリーン化事業の優先配分要件「ランクアップ外皮平均熱貫流率の基準」と同等だ。

 このように、300m2未満の住宅における適合義務化のスタートを待たず、省エネ基準のレベルを上回る外皮基準が数多く設定されている。もはや「省エネ基準を満たせば大丈夫」とは言っていられない状況だ。

 適合義務化と省エネ計算はセットで考えたい。省エネ計算をしたことがない設計者はすぐにでも計算を、すでに省エネ計算の経験がある設計者はより高性能を目指して取り組んでほしい。「適合義務化はまだ先だ」とのんびりしている場合ではない。

「日経アーキテクチュア」本誌では2017年10月26日号から、新連載「どんとこい!省エネ建築」をスタート。設計者がいまさら聞けない省エネ建築の基本や最新動向のほか、具体的な建築例を丁寧に解説・紹介します。購読者の方はデジタル版をご覧ください。