中規模ビルが最も恩恵

――不動産事業者はいかがでしょう。デベロッパーの本音としては、つまるところ環境認証の取得が賃料に結びつくかどうかがポイントになると思います。

 この点に関しては、環境認証の有無による新規成約賃料への影響を調査しています。2013年~2014年末までの2年間について6000を超える成約賃料のデータを分析しました。その結果、認証を取得したビルは、取得していないビルに比べて約4.4%のプラス効果があると見積もっています。

 さらに分析対象のビルを、大規模・築浅、中規模、それと小規模・築古の3つのグループに大別してみたところ、中規模ビル中心のグループが約9.6%ともっとも認証取得の効果が大きいことがわかりました。大規模・築浅中心のグループについては、プラスとマイナスいずれの効果もみられず、小規模・築浅中心についてはサンプルが少なく不明という結果です。大規模・築浅ビルはいわば最新のビルでアピールポイントも多く、認証を取得しても効果が出にくかったものと考えられます。

ザイマックス不動産総合研究所による2015年の研究。全サンプルを傾向スコアで5層に分け、環境認証の有無により賃料水準に差があることを統計的に示した。中規模ビルが多い第4層において+9.6%と顕著な差が見られた。小規模で築古の物件が中心の第1層~第3層はサンプル数が少なく影響は不明。大規模で築浅の物件が多い第5層は明確な影響がみられなかった。(資料:ザイマックス不動産総合研究所)
ザイマックス不動産総合研究所による2015年の研究。全サンプルを傾向スコアで5層に分け、環境認証の有無により賃料水準に差があることを統計的に示した。中規模ビルが多い第4層において+9.6%と顕著な差が見られた。小規模で築古の物件が中心の第1層~第3層はサンプル数が少なく影響は不明。大規模で築浅の物件が多い第5層は明確な影響がみられなかった。(資料:ザイマックス不動産総合研究所)
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――国土交通省ではBELSの普及に取り組んでいます。

 BELSは端的にいえばエネルギー性能に着目した環境性能表示制度で、星5つまでの5段階評価で示されます。新基準では少し認証の間口を拡げたことで、これまでよりも不動産事業者にとって身近な制度になっていると思います。