10階建てのマンションは?
戸建て住宅に続き、共同住宅を主要な住戸ごとに見ていく。モデルケースは東京都区部に建つ10階建てのマンションだ。外皮性能は2016年省エネ基準相当だが、設備は給湯器にエコジョーズ、照明にLED照明を採用したほか、省電力タイプの第3種換気装置、断熱型浴槽など、分譲マンションの平均的な設備仕様よりも省エネ設備を多く取り入れている。こうした設備を導入しても結果は★★★だった。
マンションで高い評価が取りづらい最大の理由が、日射熱取得が期待できないこと。各住戸にバルコニーが付いており、共用廊下も張り出しているため、日射が室内に入りにくい。
また、戸建てに比べて複層ガラスの普及が遅れているなど、窓の仕様は一般にグレードが低い。防火の規制からサッシがアルミサッシに限定されることも多く、窓の断熱性能が上げにくい。
設備も同様だ。マンションにおいて採用率の高い省エネ設備はエコジョーズ程度。その一方で、エネルギー消費量の多い床暖房が標準的な設備として普及している。「床暖房を採用すると一次エネルギー消費量が格段に増える。省エネ性能を上げるには、モデルケースのように★★★でも工夫が必要になる。これは熱源がガスでも電気でも同じだ」(斎藤さん)
ただしマンションの場合、建物全体で評価すると、★★★★の可能性も見えてくる。共用部は一次エネルギー消費量を削減しやすいからだ。「共用部は暖冷房を入れなければ、外皮性能は評価に関係なくなる。必要な照明はLED化するとエネルギー消費量が激減する。管理人室は暖冷房が必要だが、部屋が小さいので影響は少ない」と齋藤さんは説明する。
共同住宅でもアパートなどに関しては、戸建てに準じた傾向があり、★★★は難しくない。設計のポイントも同じだ。1999年省エネ基準の断熱仕様をベースに、エコジョーズや高効率エアコン、LED照明など省エネ設備を採用すると★★★★の取得も可能になる。戸建てでも言えることだが、さらにLow-E複層ガラスを採用したうえで方位別に断熱型と遮熱型を使い分けたり、庇の設置などの工夫を加えたりすることで、★★★★★も視野に入ってくる。