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兵庫・篠山を本拠に、古民家リノベーションに注力する才本謙二氏(写真:日経アーキテクチュア)
兵庫・篠山を本拠に、古民家リノベーションに注力する才本謙二氏(写真:日経アーキテクチュア)
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 「設計事務所がお客さんから報酬をもらって計画を立て、その後に工務店が工事をするという仕事の進め方は、もう時代遅れだと思う」。兵庫県篠山市で設計事務所を営み、古民家再生に取り組んでいる才本謙二氏の言葉だ。

 地方自治体の発注案件など豊富な仕事で多忙な日々を送っている今、従来の仕事の仕方を続けていても何ら支障がないように見える才本氏が、こう語るのには理由がある。

 才本氏は、何十棟もの古民家活用事業の実績を持つ地元の一般社団法人ノオトのメンバーでもある。空き家の所有者から相談があると、代表理事の金野幸雄氏とともに現地を訪れ、金野氏は事業計画案を立てるためのヒアリング、才本氏は建物のリノベーションに備えた間取りのスケッチと大まかな工事費の算出を、その場で行う。

働き方改革にもつながる

 この作業に報酬は期待できないので、手間は掛けないように意識している。所有者に後日提案する事業計画が受け入れられるとは限らないし、同意に至ってもすぐにリノベーションが始められるケースはそう多くない。かといって、この作業なしには空き家活用事業は始動しない。

 ただ、こうも言う。「何年後かには、多くのケースが動きだす」。古民家を借りたい事業者の数は、使える古民家の数より多いという。古民家再生は社会的な意義だけでなく、空き家の多い地域における、将来性のある仕事になりつつある。

 こうした仕事を手掛けるのは、設計事務所という組織よりも個人の立場のほうが適している、というのが才本氏の見方だ。前述のように多様な専門家の連携が必要になるが、案件によって連携すべき相手が変わってくる。個人同士のほうが臨機応変に対応しやすい。

 才本氏の事務所では、本人を含めて5人が働いているが、人によって得意分野が異なる。ゆくゆくは雇用の関係ではなく、各々が個人事業主となり、業務に応じて連携する形に変えていけないか、と才本氏は目論んでいる。「働き方も、常に集まって一緒に働く必要はない。それぞれが働きたい場所で、働きたい時間に働けばよいのではないか」

工務店任せでは職人育たず

 また施工者についても才本氏は「親方と弟子といった人間関係に基づいた工務店という組織ではない、新しい姿が求められている」とみる。古民家再生のノウハウを教えられる親方はほとんどおらず、このままでは若手が育たないからだ。

 設計者である才本氏は自ら、若い職人を集めた任意団体を設立し、技術を教え始めているという。現在、大工3人、左官1人、塗装工1人の合計5人が所属している。「親方が人手が必要になった時、個人事業主である若手を探しに来てもらえるような組織になっていけばいいと思う」(同氏)

 組織ではなく、個人がフラットな関係で連携しながら仕事を進めていく――。古民家再生の増加など、建築の仕事の内容が変化している地域から、新たな設計者や施工者の働き方が生まれるのかもしれない。