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発表できる作品をつくり続ける

坂氏は、発表できなかったことを「失敗」とする。それは発表することを非常に重要視していることの裏返しでもある。

 やはり、つくったものを発表するのは、重要なことだと思います。収入を得るための仕事だと割り切って、発表する作品と発表しない作品とを分けている人もいますが、僕は分けずに、必ず発表するように努めます。

 建築がメディアなどで発表されて、他人の評価や批評を受けることで、自分のなかで緊張感を保てるのです。人に見てもらう、ということを意識する意味でも、発表は大切なことだと思います。だから、親戚の家での経験もあって、僕は今でも発表できない仕事は引き受けないことにしています。

一般的には、建築家としてもうけ続けるのは難しく、仕事が減ってきている、という話も聞く。収入を得ることも、建築家にとっての課題になってきているのではないか。

 日本には、まだ仕事がありますよ。先進国でも途上国でも、海外では建築家に設計を依頼するのは一部の富裕層だけです。日本では、それほどお金がない人でも建築家に依頼することがある。

 また、海外と比べるとライフスタイルもフレキシブルで、和風、洋風、和洋折衷などの多様性がある。そのため、建築家にとって、実験的な住宅を設計しやすい下地があると思います。しかも、それをサポートしてくれる職人や建設会社も豊富です。

 若い建築家に仕事がない、という話も聞きますが、仕事は自分でつくっていけばよいと思いますよ。「紙の教会」などは依頼されたわけではありません。自分で動いて、仕事をつくってきたのですから。

坂茂氏(写真:山田 愼二)
坂茂氏(写真:山田 愼二)
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坂 茂(ばん しげる)
坂茂建築設計代表、NPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク代表
1957年東京都生まれ。84年クーパー・ユニオン建築学部卒業。82~83年磯崎新アトリエ。85年坂茂建築設計設立。95~99年国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)コンサルタント。95年災害支援活動団体ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)設立。2001~08年慶応義塾大学環境情報学部教授。10年ハーバード大学GSD客員教授、コーネル大学客員教授、11年より京都造形芸術大学教授。15年より慶応義塾大学環境情報学部特別招聘教授を務める。主な作品は、紙のログハウス(1995年)、紙の教会(1995年)、ニコラス・G・ハイエック・センター(2007年)、ポンピドー・センター・メス(2010年)、大分県立美術館OPAM(2014年)
談話構成:伏見 唯(ふしみ ゆい)
建築史家・編集者
1982年東京都生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了後、新建築社、同大学大学院博士後期課程を経て、2014年伏見編集室を設立。『TOTO通信』などの編集制作を手掛ける。博士(工学)。『家庭画報』にて「住宅遺産 名作住宅の継承」、『レダン』にて「クラブハウス建築美学」、『新建築住宅特集』にて「家をつくる図面」を連載中