予想外の軒天から雨水が浸入
再調査の結果、大場さんは、原因を外壁の2カ所に絞り込めると推察。1カ所は、1階トイレのサッシの真上にある換気扇。もう1カ所は、軒天と外壁の取り合い部だ。雨漏りが発覚した1階トイレから数メートルも上にある2階軒天からの漏水の疑いに対して、住宅会社は「そんなに離れた個所からの漏水はあり得ない」と反論した。
原因を特定するために、同協会はサッシの水切り部、サッシまわり、トイレの換気扇、軒天と外壁の取り合い部の4カ所で散水試験を実施。さらに、サッシ枠の接合ビスの締め付け具合を調べる「トルク値」の測定も行った。
こうした試験の結果、漏水個所と断定されたのは、住宅会社が「あり得ない」と考えた軒天と外壁の取り合い部だった。
「勢いよく水をかけると、ほんの数分で1階の洗面所に水が出てきた」(大場さん)
洗面所に染み出てきた水の性質を試験紙で調べてみると、鉄分が検出された。「つまり、構造用合板を打ちつけた釘を伝わって、壁内に雨水が浸入していることを示す」と大場さんは結論付けた。
散水試験の結果などを裏付けるために大場さんは、漏水の経路と思われた個所で内壁をはがして目視点検を実施。すると、室内には雨漏りが顕在化しなかった2階でも、構造用合板が濡れたり、腐食していた。壁内を伝わった雨水は、1階の土台にまで達していた。
「軒天と外壁との取り合い部から浸入した雨水が、防水紙の継ぎ目や防水テープの施工不良個所から内側に入り、さらに構造用合板の釘を伝わって壁内に浸入した」(大場さん)
結局、この住宅では、住宅会社の負担で、すべての外壁を施工し直した。その後、雨漏りは発生していないという。
通気層を確保すれば防げた漏水
それにしても、雨が直接かからないはずの軒天と外壁の取り合い部から、なぜ雨水が浸入したのか──。この住宅は、両腕を伸ばしたら届くほど、隣家との間隔が狭い。そのため、降雨時に風で巻き上げられた雨水が軒天に、横方向や下方向の角度から吹き付けていたのだ。
「この住宅は外壁に通気層を確保していなかった。仮に通気層があったならば、このような雨漏りを防げた可能性は高い」と大場さんは指摘する。
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