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住宅業界に詳しい秋野卓生弁護士は、改正民法下で普及を期待するものとして住宅性能表示制度と電子契約の2つを挙げる。秋野弁護士にその理由と改正民法のポイントを語ってもらった。

匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関わる秋野卓生弁護士。2017年より慶應義塾大学法科大学院教員に就任。匠総合法律事務所がまとめた「民法改正が住宅・建築・土木・設計・建材業界に与える影響」(大成出版社)を8月に出版(写真:日経ホームビルダー)
匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関わる秋野卓生弁護士。2017年より慶應義塾大学法科大学院教員に就任。匠総合法律事務所がまとめた「民法改正が住宅・建築・土木・設計・建材業界に与える影響」(大成出版社)を8月に出版(写真:日経ホームビルダー)
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 住宅会社は契約で定めていることが少なかったり曖昧だったりする。契約を重視する改正民法が施行されるまでの3年間に、この慣習を見直し、契約内容を明確にすることが重要だ。

 改正民法は「契約書」重視のビジネスを求める法改正の側面を持つ。住宅会社には契約書の重要性をよく認識してほしい。

 「当社がビジネスをするに当たり、本当にこの契約書・契約約款に記名捺印してよいか」「当社に不利な契約条項はないか」「リスクはないか」という視点を持ち、契約文化への適合を果たしていく意識の醸成がまず必要だ。

 改正民法は、責めに帰すべき事由の立証責任は債務者(住宅会社)にあるとする。これは実務上、免責を立証できなければ契約書に書かれた内容を守らなければならないことにつながる。「守ることのできる約束事を契約書に書く。守れない事項は免責条項とする」という契約書・約款の整備が重要になる。

 改正民法の施行日は、2020年1月から4月までの間になる可能性が高い。恐らく施行直前に国土交通省の標準契約約款や民間連合協定の約款の改訂がなされるだろう。消費者契約法改正の議論もある。

 これらの情報をいち早く取得し、自社にとって最良の契約約款や保証書の作成に力を注いでほしい。

性能表示制度を活用

 民法改正では、契約内容を明確化することが求められる。住宅業界では、平面図、立面図、見積書程度のざっくりした内容で契約を交わすことが少なくない。どのような性能の建物を建築するのか、よく分からない契約も多い。なかには、工事着工までに「色決め」の打ち合わせ(設計業界で言えば、実施設計の打ち合わせ)を経て、着工までに契約内容(設計図書)を確定している会社もあるが、そうした会社はまだ少数だ。

 「契約重視」の民法改正後は、契約内容を確定してから契約を締結するのが望ましい。しかし、住宅業界で長く続く契約文化を変革できるかというと、非常に高いハードルがある。そこで、第一段階として、建て主との契約締結時に住宅性能値の合意を交わすことを勧めたい。住宅性能表示制度の活用は合意手法として極めて有用と考える(品確法第6条)。

品確法 第6条(住宅性能評価書等と契約内容)

住宅の建設工事の請負人は、設計された住宅に係る住宅性能評価書(以下「設計住宅性能評価書」という。)もしくはその写しを請負契約書に添付し、または注文者に対し設計住宅性能評価書もしくはその写しを交付した場合においては、当該設計住宅性能評価書またはその写しに表示された性能を有する住宅の建設工事を行うことを契約したものとみなす。

 細かな仕様まではともかくとして、基本性能を合意しておくことは、契約内容の明確化になる。こうした要請に自社の契約手法をフィットさせるのに、住宅性能表示制度はとても有用な方法だ。国土交通省にも改正民法対策としての同制度の普及に力を入れてほしいと思う。