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「安藤忠雄 建築家と建築作品」

「安藤忠雄 建築家と建築作品」の表紙
「安藤忠雄 建築家と建築作品」の表紙

 「安藤忠雄の建築」といえば、「光」。たびたび本の話をする安藤氏は、以前から建築家の必読書の1つとして「陰翳礼讃」(谷崎潤一郎著)を挙げてきた。氏は普段、5階建ての事務所(大淀のアトリエII)の、吹き抜け空間の1階で仕事をしているという。そのことを「自分は『光の底』で仕事をしている」と表現していたのを何かで読んだ。そうか、安藤氏は「底」に居続けることによって「闘う」姿勢を保っているのだ、と腑に落ちた。

 本書「安藤忠雄 建築家と建築作品」は、安藤氏の軌跡を文章・図版で振り返る「評伝」の前半と、後半の「全346作品録」の2部構成でなる大ボリュームの1冊。社会的観点から安藤氏の作品を位置付けるテキスト部分は、第三者である著者が淡々と、かつ臨場感あふれる「言葉」でつづった「安藤忠雄通史」だ。

 エピローグでは、安藤氏の少年・青年時代について触れられている。「手に職をつけなければ」との思いから近所の木工所に出入りし職人の仕事ぶりをいつも見ていたこと、大学への道が閉ざされていたので書籍を読みふけって建築を学んだこと。どうしてもコルビュジエの建築が見たくて暮らしを切り詰め貯金をしてヨーロッパ旅行へ行ったこと──。どんな状況にいても「光」を追い求めてきた経験こそ、安藤作品の主柱なのだと改めて思う。

 安藤氏を取り巻くどんな「言葉」も氏の人物像をより強固に浮かび上がらせる。それは氏が「揺るぎない信念」のもと活動を続けてきたからだ。きっと、この誰にもまねできないレベルの「不変」性や「持続力」が、人の心を揺さぶる発言や空間を生み出しているのだろう。

著者:安藤忠雄+松葉一清
判形:B4変形
ページ:482ページ
出版社:鹿島出版会
発売:2017年10月
定価:本体1万5000円+税

関口奈央子(せきぐちなおこ)
東京・神保町にある建築専門書店「南洋堂書店」の店員。建築の短大在学中、卒業制作で神保町をテーマにしたことがきっかけで南洋堂書店を知り、アルバイトで入社後、社員に。南洋堂書店ウェブ内のコラム「南洋堂日和」でも、本と日常を結び付けてつづっている。今回、紹介した3冊はすべて、南洋堂書店ウェブショップで購入できる

※日経アーキテクチュア編集部より:「安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言」が好評発売中です。「安藤忠雄展-挑戦-」(国立新美術館で12月18日まで開催中)に行こうと思われている方、あるいは忙しくて行けない方、ぜひご一読ください。