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幅と深さの確保が最も重要

 補修だけでなく、新築時のシーリングの設計、施工も重要だ。図2は新築時の注意点をまとめたもの。このなかで、多くの技術者が最も重要と指摘するのが、シーリングの目地幅と目地深さを適切に確保することだ。日本窯業外装材協会の冊子には「目地幅は10mm程度(1時間準耐火構造の場合は開口部を除き10mm以下)、目地深さは最低でも5mm以上確保する」よう求めている。

〔図2〕新築時にシーリング材を設計・施工するときの注意点
〔図2〕新築時にシーリング材を設計・施工するときの注意点
最も重要なのはシーリング材の幅と深さを適切に確保することだ。ただし、1時間準耐火構造の建物では、防災上の観点から開口部回りを除いて目地幅を10mm以下としなくてはならない(資料:取材をもとに日経ホームビルダーが作成)
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 北条塗装店の北条さんは「新築時に幅と深さをそれぞれ8~10mm程度確保し、基本に忠実に施工したものは、20年近く経過してもほとんど劣化が見られない。逆に幅や深さをきちんと確保しないものは、同年数でボロボロになる。特に深さを十分確保していないものは、補修段階でも深さを増やせないので、新築時の施工がより重要になる」と話す。

 また、サッシ回りのシーリング材施工の問題点を指摘する声もある。例えば、金具留めのサイディングとサッシの間をシーリング材で充てんするときは、目地に片ハットジョイナーを設置してからシーリング材を打つのが原則だ〔図3〕。

〔図3〕開口部左右の目地には片ハットジョイナーを施工
〔図3〕開口部左右の目地には片ハットジョイナーを施工
金具留めのサイディングの場合、開口部左右のシーリング目地には、水平方向のずれを防ぐため片ハットジョイナーを用いるのが原則だ(資料:取材をもとに日経ホームビルダーが作成)
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 しかし、曽根塗装店の曽根さんは「長年にわたってシーリング工事の補修に携わってきたが、新築時に片ハットジョイナーが施工されていた現場を見たことがない。この状態のシーリングを補修するのはとても厄介で、後から片ハットジョイナーを施工できないので、バックアップ材を室内側の空洞に落ちないように慎重に設置し、シーリング材を打つしかない」と指摘する〔写真4〕。

〔写真4〕補修方法が複雑に
〔写真4〕補修方法が複雑に
片ハットジョイナーが施工されていないシーリングを補修する場合には、写真のようにバックアップ材が室内側の空洞に落ちないように慎重に挿入し、シーリング材を施工する(写真:曽根塗装店)
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 ところで、サイディング裏面での雨水滞留を防ぐには、シーリング材の劣化抑制だけでなく、通気層の確保、透湿防水シートや防水テープの施工にも十分配慮する必要がある〔写真5、6、図4〕。この部分の施工不良は、サイディング材の劣化だけでなく、躯体劣化や室内側への雨漏りにつながる恐れもある。

〔写真5〕防水テープの施工も念入りに
〔写真5〕防水テープの施工も念入りに
上の写真では、防水テープが施工されていないので、透湿防水シートがサッシ枠のフィン(つば)に密着していない。これでは、雨水の浸入を防げない(写真:日本窯業外装材協会)
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〔写真6〕透湿防水シートの重ね不良も問題
〔写真6〕透湿防水シートの重ね不良も問題
透湿防水シートが土台水切りの上に重なっていない。このため、壁体内への雨水浸入を許してしまった。ちなみに透湿防水シート相互の重なりは、上下90mm以上、左右150mm以上を確保する(写真:日本窯業外装材協会)
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〔図4〕水切りとの隙間を10~15mm確保
〔図4〕水切りとの隙間を10~15mm確保
防水テープを使って、透湿防水シートを土台水切りに重ねて張る。サイディングの下端と土台水切りの間には、10~15mmの隙間を設ける(資料:日本窯業外装材協会)
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 日本窯業外装材協会・専務理事の広瀬忠利さんは「サイディング防水の観点から特に注意していただきたいのは、外壁工事と付帯物工事の順番だ。例えば、外壁工事の終了後にダクトなどの付帯物工事が入ると、二次防水のシートが破れ、そこから湿気が漏れて、ダクト周りのサイディングの劣化につながる恐れがある。そうした事態を招かないよう、工程や段取りに十分配慮してほしい」と話している。