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「81年~00年」住宅の診断の勘所

「木造住宅の耐震診断と補強方法」(日本建築防災協会)などの一般的な診断法では、上部構造の耐力などを個別に評価するため、築年数にかかわらない。ただし、現況調査には「81年〜00年」住宅特有のコツが存在する。

断熱材をめくって確認

 1981年以降に建てられた建物を診断する際に意外と壁となるのが、筋かい端部の確認だ。金物の有無だけでなく、施工状況を見るためには、細部をしっかり確認したいものだ。

 だが、81年ごろから断熱材が使用されるケースが増え、筋かいが断熱材に隠れてしまっていることも少なくない。外壁側など手の届かない壁を確認する場合は、先端がカギ状になっている長い棒(例えば、ペンキ塗装用のローラーポール)を使う方法を木耐協は紹介している。

 また、都心部などでは防火のため石こうボードが張られている場合もある。確認のため切り欠く場合は補修の工程や費用も発生するので注意が必要だ。

断熱材を棒でめくる(写真:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)
断熱材を棒でめくる(写真:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)
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石こうボードを切り欠く場合も(写真:金井工務店)
石こうボードを切り欠く場合も(写真:金井工務店)
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建て方のトレンドを読む

 耐震診断を行う場合、「地盤・基礎、図面(耐力壁などの現況調査)、劣化の三つが重要だ」と耐震研究会(東京都世田谷区)代表理事の保坂貴司さんはいう。なかでも、図面の確認をする際は、大工の癖や当時の建て方のトレンドを読むことがカギを握る。

 例えば、平面図が残っているケース。筋かいの位置や仕様などが記載されていても、そのまま信用するのは危険だ。大工などの現場の判断で、図面とは異なる施工が行われていることも少なくない。このような場合、保坂さんは、床下や小屋裏に入り柱の接合部や筋かいの向きなどを確認。金物の有無や使用されているくぎの種類などもチェックする。可能であれば建物の隅部4カ所を確認。図面と照らし合わせ、その図面にどの程度従って施工されているかも参考にしながら、大工の施工傾向を読む。

 年代別に施工傾向をつかむのであれば、住宅金融支援機構が公開している、過去に発行した木造住宅の工事仕様書が参考になる。主に機構利用者向けの仕様ではあるが、当時の技術的な傾向は把握できる。

木造住宅の過去の工事仕様書を公開
木造住宅の過去の工事仕様書を公開
住宅金融支援機構は、過去に発行した木造住宅の工事仕様書を公開している。同機構の融資を受けるに当たり求められる住宅の仕様だ。住宅金融公庫時代の仕様書も閲覧できる(http://www.flat35.com/tetsuduki/shiyou02.html
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