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 熊本地震では液状化による住宅被害が、熊本市内だけで約2900棟に生じた。液状化が広範囲に発生した地区で被災者の相談に当たるWASC基礎地盤研究所(大阪府茨木市)は、2017年1月末までに44棟を現地調査。長期の軟弱地盤対策として地盤補強工事を行っていた3棟でも、被害の発生を確認した。

 長さ9mの小口径鋼管を支持杭として採用していた住宅Dは、建物の不同沈下は生じなかったが、周囲の地盤や会所升などが20cm沈下した〔写真1〕。長さ5mの小口径鋼管を摩擦杭で採用していた住宅Eは、建物が16cm不同沈下〔写真2〕。短い木杭を摩擦杭で採用していた住宅Fは、建物が6.7cm不同沈下した。

〔写真1〕杭が抜け上がり
〔写真1〕杭が抜け上がり
補修工事後の住宅D。地震で周囲の地盤や会所升などが20cm沈下した(資料:WASC基礎地盤研究所)
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〔写真2〕16cm不同沈下
〔写真2〕16cm不同沈下
住宅Eは建物が不同沈下した影響で、配管が逆勾配になった
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 住宅Dの建物が沈下しなかったのは、液状化しない硬い支持層に杭が載っていたからだ。高森洋社長が住宅Dで地震後に実施したスウェーデン式サウンディング(SWS)試験では、杭の先端付近に半回転数(Nsw)が788(換算N値54)の硬い層が確認されている〔図1〕。

〔図1〕地震後に行った支持杭の住宅Dの試験結果
〔図1〕地震後に行った支持杭の住宅Dの試験結果
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 一方、住宅Eと住宅Fが不同沈下したのは、摩擦杭を入れた層が液状化して表面摩擦が効かない状態になったからだ。住宅Eの敷地で地震後に実施したSWS試験を見ると、深さ4m付近に換算N値が18のやや硬い層があり、その下に軟弱なシルトや砂質土が続き、深さ14mで換算N値が33の硬い層が現れた。深さ14m付近までの液状化層に、摩擦杭が丸ごと入っていると思われる〔図2〕。

〔図2〕地震後に行った摩擦杭の住宅Eの試験結果
〔図2〕地震後に行った摩擦杭の住宅Eの試験結果
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 実は、住宅Eの地震前のSWS試験では、深さ3mの層でロットが貫入不可となり、それより先は調査が行われていなかった。高森氏は「10mより浅い層で貫入不可になったSWS試験のデータでは、液状化リスクを予測できないので、たとえ支持杭を使っていても沈下を招く恐れがある。多少硬い層でも打ち抜ける硬いスクリューポイントをロットの先端に付けて、深さ10mまでのデータをそろえて判断することが欠かせない」と訴える。